オックスフォードな日々

とあるオックスフォード大学院留学生のブログ

探究せよ、真理こそ我らのしるべなり

120706103253916221456

学ぶことが面白い。最近、そう心の底から実感する。「将来、人間の心を持ったロボットを作る。」そんな幼い頃からの夢を胸にアメリカに来てから、もうすぐ二年の月日が経つ。未だに人生の劇的な変化こそ訪れないが、確実に前進していることを今日になってやっとこの身で感じられるようになってきたことが少しばかり嬉しい。忙しかったこの春学期も先週で区切りがつき、新しいアパートへの引越しも無事に終わった。天気もよく、庭から外を眺めていると、トンビが悠々と空を舞っていた。

思い返せば大学初日、アメリカ人の友達に連れられて、コンピュータサイエンス学部の学長を訪ねたことが全ての始まりだった。辿々しい英語ながら懸命に自分の思いを伝えると、彼はゆっくりと頷いてこう語った。「コンピュータサイエンスの知識は、精確なシミュレーションを可能にするだろう。そしてそのアルゴリズムの効率化はさらなる発見を生むだろう。しかし、人工知能の分野は一筋縄ではいかない。いかにして人が物を認知するのか、どうやって言語を習得するのか、どのように互いに影響を受けあうのか、それらを明らかにする脳の完全なメカニズム、あるいは人間そのものが未だに多くの謎に包まれているからだ。このような複雑な分野に本気で関わりたいのならば、柔軟かつ広い思考力が必要になるだろう。」そうして始まった大学生活、心理学や離散数学、生物学や哲学などの授業を履修しながら、これら一見全く関係のない教科の中にも、確かに多くの重要な共通する要素があることに気づき、次第に彼の言葉の真意を理解しはじめた。

一つの前進は、発達心理学のクラスで幼児の言語習得に関する研究を行ったことであった。人間はどれだけの能力を生まれながらに持っていて、何を学習で得るのか。そんな研究は、コンピュータサイエンスの人工知能の分野にも大きな関係があり、また逆にコンピュータサイエンスで研究されているアルゴリズムも、人間の言語習得を効率化するかもしれないと気づかされた。そんな思いが自分に、理学士号のコンピュータサイエンスだけでは欠く知識を補完するためにも、その対極にある文学士号の心理学を重専攻することを決意させた。

もう一つの前進は、人工知能のクラスを履修したことであった。四年生と大学院の学生とでチームを組んだプロジェクトがいい成果を上げ、結果、その教授の研究に参加することとなった。更にアメリカの大学の自由な履修制度が大学院のクラスを履修することも許し、そこで論文出版や、学会発表、企業との会議にも参加させてもらった。これらの文字面はとてもよく、自分に大きな自信を与える一方で、ある種の驕りも生んだ。しかし、そんな見栄とは裏腹に、内心ではとてつもなく大きな不安とも対峙してきた。それは、話せば話すほど露呈する自らの知識不足や経験不足から、そしてそこでの自分を遙かに凌ぐ学生達との出会いからであった。やがて、そんな虚飾じみた自分像に対する疑心転じて知識に対する渇望となった。”Veritate Duce Progredi”(探究せよ、真理こそ我らのしるべなり)これはアーカンソー大学の校訓である。ここに来てやっと、そんな学問の本当の意味でのスタート地点に立つことができたような気がした。

アメリカだからこそできること、それは必ずしも一つではない。そしてそれは人それぞれで異なるのだろう。しかしここに確かに、アメリカの大学ならではの学問というものが存在することを勘定し忘れてはならないと思う。それらが可能にする重専攻や自由な履修システムなどは、自分の潜在能力に気づかせてくれたり、やり甲斐を与えてくれるであろうからだ。

日々努力を続けても、なかなか変化は目に見えてこない。進めば進むほど、夢はさらに遠ざかっていくようにさえ感じられる。しかしそれでも続けることが、いつしか自分に大きな変化をもたらすのだろうと信じたい。人との出会いを大切にし、努力を怠らず、仲間と切磋琢磨しながらここで大きく成長したいと思う。

アメリカ留学研究ヨーロッパ留学ブログ(ブログ村)

著者紹介:

高専在籍時にAFSの53期生としてアメリカのオレゴン州で一年間地元の高校に通う。帰国後アメリカのアーカンソー大学フェイエットビル校に編入し2011年に理学士コンピューターサイエンス、2012年に教養学士心理学を修了。2012年秋よりオックスフォード大学にて、博士号課程で計算神経科学を勉強中。色々と大変ですが、常に色んな事に挑戦しながら精一杯頑張ってます。
詳しくは自己紹介ページよりどうぞ^^

follow on facebook follow on line
follow via RSS follow us in feedly Subscribe with Live Dwango Reader

Aki • 2010年5月10日


Previous Post

Next Post

Comments

  1. Ginjiro 2010年6月6日 - 9:54 PM URL

    夢すごいですね!
    ブログおもしろいです^^
    過去のも読みます:)
    これからも頑張ってください!!

  2. Aki 2010年6月14日 - 2:43 PM URL

    ありがとう。
    かなりスローペースでの更新だけど、ちょっとずつでも思ったことを書いてきたいと思ってるから、暇なときに読んでみてね。
    もっと書く時間が取れたらいいのにな。笑

  3. コメントを残す

    Your email address will not be published / Required fields are marked *

    *