オックスフォードな日々

とあるオックスフォード大学院留学生のブログ

オックスフォード大学院・博士課程はこんな感じ。〜学費、奨学金、マイルストーン

先日友人から「『大学院生 ブログ』ってGoogleで検索すると、Akiのブログが二番目に出てきたよ!」と言われてみて、試してみるとなるほど、今日(2016年5月27日)の時点で4番目。その前に来る3つは「にほんブログ村」や「人気ブログランキング」というリンク集なので、なんとブログの中では一番最初にでてくるみたい。試しに『大学院 ブログ』と調べてみても結果は同様。

だけど最近のこのブログ、「バレエという芸術に触れて」「アメリカ・イギリス歯医者事情」「イギリスから持ち込まれたベッド文化」「黄金アンモナイトの化石はどうやって出来たの?」「ロンドン大晦日カウントダウン花火ショー」…と『大学院 ブログ』からは程遠い内容の記事ばかり…。というわけで今回はオックスフォード大学の大学院生活に関して記事を書くことに^^笑

 

オックスフォード大学の博士(DPhil)課程(Division of Medical Science)

僕の在籍する課程では、各学生は所属するラボのPI(Principal Investigator: ラボヘッド)の指導のもと個別のテーマで研究を行い、3,4年間で学位取得を目指す。

学生のバックグラウンド

このコースに入ってくる人のバックグラウンドは主に次の3つ。

  1. 学士号保持者(Bachelor degree)+ある程度の研究の経験あり
  2. 修士号保持者(MSc/MPhil)
  3. Doctoral Training Centre (DTC)学生

最後のDTCは、博士課程に進学したい学生の為の研修機関。一年間の間に学部の壁を超えて2,3の研究室でプロジェクトを経験した後に、翌年度より学生の選んだ研究室でDPhil課程を始めることになる。

僕の所属する研究室では7人中、1の例が自分を含め2人、2の例は3人、3の例は2人といった感じ。

人種は、僕以外だとイギリス人3人と、ブラジル人、パキスタン人、メキシコ人がそれぞれ一人ずつ。

EU圏外の学生は学費が約5倍…。だから皆、奨学金。

学費はEU圏内の学生だと2016年の時点で年間£4000(約65万円)なのに対して、圏外の学生だと£19000(約300万円)と約5倍。学費がかかるのは博士課程の場合は3年目までだとはいえ、普通に払おうと思ったら学費だけで計£57000と一千万円近く。これを聞くと「金がなければ勉強もできないのか!」と思うかもしれないけれど、実際はそんなことはない。イギリスで博士課程なんてやっている人は大抵何らかの奨学金をもらっている。

実は僕の場合は奨学金の応募に間に合わず、一年目は両親からお金を借りるハメになった。2年目からは全てラボのPIの運営する基金から出して貰い救われたものの、こんな間抜けな誤ちをおかさないためにも、留学を考えている人は予め奨学金についてはよく調べておくことをおすすめ^^;

課程概要

OxfordDPhil

1年目:お試し期間の研究生

昔『オックスフォード大学の一年目は「予備生」』でも紹介したように、その一年目はProbationary Research Student (PRS) と呼ばれる「お試し期間の研究生」という立場。この期間に学生は、各自自分の研究に必要だと思われる様々な研修や講座、セミナーに参加する。

オックスフォード大学の一年間は、10月からのMichaelmas term、1月からのHilary term、4月からのTrinity termの三学期で構成されているのだけれど、その4ターム目までに、各学生はPRSから正式なDPhil学生になるために”Transfer of Status viva”という試験を受けることになる(アメリカのPh.D課程におけるQualifying Exam)。

僕の場合も、「Transfer viva終わったー!」 でも書いたように、4ターム目にトランスファーを無事終え、晴れてDPhil statusに昇格することが出来た。ちなみに試験の結果には三通りあって、

  • Transfer to DPhil status without reservations
  • Student should make a 2nd attempt to transfer to DPhil status in 1 term
  • Transfer to DPhil status if a satisfactory written response to this report is obtained

僕の場合は実はこの3つ目だった。理由は「研究計画が少し楽観的すぎるから」とのことで、書類をreviseして再提出する必要があった…^^;

2年目、3年目:博士候補学生

2年目からは基本的にはTransferの時点で提出した「研究計画書」に基いたペースで研究を進めていく。そしてTransfer同様、今度は9ターム目(3年目の最終ターム)までに、「研究をあと1年以内で終わらせられることを証明するため」に”Confirmation of Status viva”という試験をパスする必要がある(アメリカのPh.D課程におけるPreliminary Exam)。早い人だとこれを7ターム目とかに終わらせて博士号を3年間とかで取得していく人もいるのだけれど、僕の場合は「オックスフォード博士課程3年目のConfirmationを終えて残りあと一年。」で書いたように、9ターム目の終わりギリギリに滑り込みセーフ…。ちなみにこの9ターム目に間に合いそうにない人も、理由を説明する書類を提出して認められた場合は手数料を支払うことで延長も認められるのだとか。

3年目、4年目

Confirmation of Statusを通過すると、博論提出までの1年間のカウントダウンが始まる。僕の学部の場合は、期限までに10万語の博論を提出し、そしてそれから半年後くらいに2人の内部審査官と1人外部審査官の前で2,3時間ほどの口頭発表。そしてそれをパスすれば晴れて博士号が授与されるという流れ。

大学院生活ってどんな感じ?

研究生活

オックスフォード大学の学部生や講義ベースの修士の学生であれば、基本的に彼らのスケジュールは上述した三学期制のシステムに基づく。それぞれのタームは8週間で構成されているため、年間24週(6ヶ月分)ということになる。日本の大学の場合だと、講義日数は前・後期それぞれ15週間と文科省によって定められているとかで年間30週(7ヶ月半分)。僕の通っていたアメリカの大学を例にとっても、春・秋学期それぞれ15週間で年間30週(7ヶ月半)か任意で夏学期も履修すればプラス10週間で年間40週(10ヶ月間)だった。だからこうして見てみると、期間だけで言えばオックスフォード大学は他国の大学より比較的少ない印象。

まぁどちらにせよ、こういった学期システムは、博士課程の学生には休暇という意味では全く関係のないこと…笑。僕たちは、大学がターム中であろうと外であろうと研究を続けることが望まれている。年間で取得できる休暇は8週間程度とされており、ほとんどの学生はその休暇をクリスマスにあてている様子。僕の場合はその休暇に、「内気でもサマースクール参加しまくれば学会ボッチにはならない 〜計算神経科学サマースクールリスト」で紹介したような色々なサマースクールに参加したりした。

日々の研究生活には厳密なルールはないのだけれど、僕の場合は基本的には10~11時にラボに来て、19~20時に帰宅する感じ。論文など研究に関連する読み物等は基本的に元気な午前中にやって、論文執筆やプログラミング等は午後にやることが多い。また、僕のラボの場合、研究する日数が週5以上であれば曜日を気にする必要もなく柔軟にスケジュールを決められ、これは結構嬉しい。でも一方で、日曜日にラボのPIに突然呼び出される、なんてことも少なくはない…^^;

基本的には、こんな感じに毎日同じようなスケジュールで地道に研究を続けていく日々なんだけれど、学部生のためのレクチャーやチュートリアルを担当することになった場合は結構タイムマネージメントが面倒になる。僕の場合、「チュートリアル(個人指導)を受け持つ」で書いたように、DPhil二年目の時に初めてチュートリアルを担当した。その時は担当したのは1グループだけだったのだけれど、翌年は2グループ担当することになり、授業の準備やエッセーの採点、メールでの受け答えに、思いの外自分の研究の為の時間と体力が奪われて大変だった^^;

ここの博士課程の場合、卒業までに出版しなくてはいけない論文の本数等の規定はなく、そのペースは分野やラボの方針、ジャーナルのレベルによっても大きく変わってくる。

僕のラボでは皆、大体年に1・2本のペースで原稿を書き上げて投稿していることから、僕も2年目に1本、3年目に2本だしていて、現段階で自分が1st Authorの論文は4本が審査中と言った感じ。レビューに1年とかかかることも珍しくないため、結構長いこと宙ぶらりんな気持ちだったり。卒業までに、せめて一本でも割と名前の通ったジャーナルに通ってくれれば…と願っている(切実)

研究以外の生活

僕の場合は、ケンブリッジ大学大学院の篠原肇さん(はじめのすすめ)のように文武両道の超アクティブな学生生活ではないけれど、それでもオックスフォードという土地柄、色々なカリッジでのFormal Dinnerに招待してもらって夕食を楽しんだり、「バレエという芸術に触れて。イギリスと心の余裕と人生の豊かさ」で書いたように、街中で催される劇やコンサートを見に行ったり、研究以外の生活も結構楽しい。

最近だと、ウースターカリッジのフォーマルディナーに招待してもらったり、メーデーには朝4:30時に起きてモードリンカリッジの前に集まる25,000人の群衆の一部になったり、

image via BBC NEWS

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仕事終わりに8時からパンティング(ボート漕ぎ)してみたり、

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僕の所属するSt Catherine’s College (Catz)で誕生日パーティー開いてみたり。

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来週も、Merton CollegeとLinacre Collegeとで2日続けてそれぞれのFormal Dinnerに招待してもらっている。そしてその次の週には、CatzでGarden Partyが開催されて、6月の終わりにはQueen’s CollegeでCommemoration Ball (晩餐会・舞踏会)が控えている。常に何か気分転換になるようなことが転がっていて、とても幸せな環境だと思う。

 

最後に

「大学院生活」と聞くと、なんだかとっても地味〜なものを想像する人も多いと思うのだけれど、少なくともこのオックスフォードの街ではそうならない方法はいっぱいある。もちろん研究で結果を出すことへのプレッシャーは常に感じるし、イギリスらしい天気の悪さには気が滅入ってしまうこともよくある。それでも、たまに正装してカリッジのダイニングホールで夜ご飯を食べたり、タキシードやドレスを着飾って舞踏会やパーティーに参加すれば、その時だけは違う世界に浸ることが出来る。そういう時間って、とっても大切なのだと思う。

研究が思い通りに進まなくて憂鬱な時は、一日中頭を抱えていたってたいして能率は上がらない。もちろん博士課程を生き延びるためには、自分に厳しくある必要がある。自分の研究の価値が分からなくなっても逃げ出すことは出来ない。悩み苦しみながらも必死に考えぬいてどうにかして筋を通さなければならない。だけど、逆にその厳しさが自分を追い詰め、結果最後に潰れてしまえば元も子もない。折角必死で頑張ってきたのに、それが報われないなんて悲しすぎる。だから、たまには自分に甘くなってもいいのだと思う。

一回深呼吸をして、違う世界に目を向けてみたら、案外そこら辺に探していた手がかりが転がっているかもしれない。そんな都合のいいことはなかったとしても、頭を一回すっきりさせてもう一回一から考え直せばいいだけのこと。オックスフォードに来てからの3年半だけで、本当に沢山の上り下りがあった。ここに来たからこそ知った苦しみは少なくはない。だけど同時に、きっとこの街だったからこそ潰れずにいられた。あと残り半年。一所懸命に”オックスフォードな日々”を過ごしたいと思っている..。

 

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著者紹介:

高専在籍時にAFSの53期生としてアメリカのオレゴン州で一年間地元の高校に通う。帰国後アメリカのアーカンソー大学フェイエットビル校に編入し2011年に理学士コンピューターサイエンス、2012年に教養学士心理学を修了。2012年秋よりオックスフォード大学にて、博士号課程で計算神経科学を勉強中。色々と大変ですが、常に色んな事に挑戦しながら精一杯頑張ってます。
詳しくは自己紹介ページよりどうぞ^^

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Aki • 2016年5月28日


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Comments

  1. @hogsford 2016年5月28日 - 7:58 PM URL

    久しぶりにブログ更新しました。「オックスフォード大学院・博士課程はこんな感じ。」https://t.co/im3t2FC3RT

  2. @HajimeShinohara 2016年5月28日 - 11:49 PM URL

    AKi(@hogsford)さんの記事。非常によくまとまっています!
    ケンブリッジとオックスフォードで、同じような事柄でも呼び方がだいぶ違う様子。 オックスフォード大学院・博士課程はこんな感じ。 https://t.co/nn82pLORLt via @hogsford

  3. @bori_so1 2016年5月29日 - 2:38 PM URL

    “オックスフォード大学院・博士課程はこんな感じ。”
    https://t.co/joAxB5POlJ @hogsfordさんから

  4. hogsford 2016年5月30日 - 7:22 PM URL

    オックスフォード大学、博士課程のまとめ

  5. kk 2016年12月4日 - 2:39 PM URL

    日本の大学にすらお金が無くて入ることを許されず、生活に追われて20代後半にして過労とパワハラで精神を病んでしまい、自分ひとり生きて行くのに精一杯なのに親の介護が待っています。
    良い歳して恥を忍んで親元へ戻り、完治するも人生終わったも同然の私からしたら国外でも学べるとは羨ましい別世界の話です。まだまだ日本ではオックスフォードというブランドだけでも生きていけるでしょう。
    どうか日本でお抱え学者にならずに、これからの日本を良い方向へお導きください。

  6. Aki 2016年12月6日 - 1:04 PM URL

    コメントありがとうございます。こうやって思い通りに勉強してこれたのも、自分には運良く恵まれた環境があったからとよく考えさせられます。
    この環境で学んだことを、いずれより多くの人々の暮らしに還元できることを目指し、これから一所懸命に生きていきたいと思っています。

  7. Kumiko Aoyama 2017年4月19日 - 8:28 AM URL

    非常に参考になる記事を読ませていただきました。どうもありがとうございます。
    オックスフォードのmathematicsの修士課程に出願を考えているものです。日本の大学で修士号を取得してから社会人をしており、年齢は29歳です。オックスフォードの大学院に入るにはやはり現役生の方が有利でしょうか?
    社会人を経験してから修士課程、博士課程に入られる方もいますか?

  8. Aki 2017年4月19日 - 3:21 PM URL

    こんにちは。正確なことはわかりかねますが、僕の知っている限りですと現役生が有利・社会人が不利といった話は聞いたことはありません。
    実際に、企業や官庁からイギリスに派遣されオックスフォードの修士課程に合格して入学された日本人の方を多く知っています。
    修士の入試は基本的には学生時代のGPAと出願時のStatement of Purposeに基づいて行われるものと思いますので、ぜひ出願してみてください^^

  9. コメントを残す

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