オックスフォードな日々

とあるオックスフォード大学院留学生のブログ

さまざまのこと思い出す桜かな

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今日、アーカンソー大学では、日本人会によってお花見が催され校内の桜の木の下は多くの人で賑わった。用意された焼き鳥と焼きそばと三色団子を食べながら、風に散りゆく桜を眺めていたら、一人のアメリカ人がこう話しかけてきた。「残念だったね。三日前だったなら花も満開で、まだ散り始めていなかったのに。」そして彼は、少し悲しそうな顔を見せた。

世の中に たえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし

かつて在原業平は、散りゆく桜の花びらを惜しみ、こんな気持ちになるならばいっそのこと桜などなければ良かったのにと、そんな想いを唄に詠んだという。しかし、その有名な唄には、こんな返歌があるという。

散ればこそ いとど桜はめでたけれ 憂き世になにか久しかるべき

この憂き世の中で、潔く散りゆく様こそが美しいのだと。名もない歌人によって残されたこの唄だが、これこそがまさに日本人にとっての桜を象徴した唄であると感じる。武士道は桜であり騎士道は薔薇であると例えられるように、多くの日本人にとって、華麗に咲き続け花弁を残し枯れゆく薔薇よりも、美しいまま散りゆく桜の方が美しく映るのだろう。今日も、散るゆく桜を写真に納めようとカメラを構える多くの日本人を見かけた。

いずれにしろ、「さまざまのこと思い出す桜かな」と、松尾芭蕉が詠んだように、日本人はどの時代も桜に様々な思いを巡らせてきたのだろう。今でもこの時期になると、おおかた毎年一曲は桜と題された楽曲がヒットチャートを賑わせる。その度に、やはり日本人は今でも日本人なのだと気づかされ、日頃の憂色も少し晴れる。そしてなによりも、そんな曲を好む自分も、やはり日本人なのだな。と実感させられる。

いにしへの 人の心のなさけをば 老木の花の梢にぞ知る

長い歴史の中で日本人が培ってきた、気高く品がありしかし気取らず潔い、そんな文化を持ったこの美しい国日本を心から愛してやまない。だからこそ、そんな文化を、何の後ろめたさも感じずにいとも簡単に一蹴しようとする近年の流れには疑問を抱かざるにはいられない。

先日、G8外相会合閉幕後の共同記者会見にて、唯一日本だけが日本を含めどの国の記者からも質問を受けることがなかったという。岡田外相は「日本の代表の発言の機会がなくなったことに、若干いかがなものかという感じがする。」と立腹であったそうであるが、それもそのはずである。「Trust me」と誓った翌日に意見を翻したり、法を犯してもなおその場を退かない首相に代表される国など誰が信用できるであろうか。誠実ではなく、そして潔さもない。信念もなければ、美しさもない。

新渡戸稲造はこう記した。「その武勇と分得の教訓は解体されるかもしれない。しかしその光と名誉はその廃墟を越えて蘇生するに違いない。あの象徴たる桜の花のように、四方の風に吹かれた後、人生を豊かにする芳香を運んで人間を祝福し続けるだろう。
心からそう願ってやまない今日この頃である。

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著者紹介:

高専在籍時にAFSの53期生としてアメリカのオレゴン州で一年間地元の高校に通う。帰国後アメリカのアーカンソー大学フェイエットビル校に編入し2011年に理学士コンピューターサイエンス、2012年に教養学士心理学を修了。2012年秋よりオックスフォード大学にて、博士号課程で計算神経科学を勉強中。色々と大変ですが、常に色んな事に挑戦しながら精一杯頑張ってます。
詳しくは自己紹介ページよりどうぞ^^

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Aki • 2010年4月4日


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Comments

  1. Y 2010年4月4日 - 2:21 PM URL

    じゃあ私も一句。
    はらはらと
     散りゆく桜
        異国の地
      眺めて思ふ
         ふるさとの春 
     

  2. Aki 2010年4月4日 - 2:52 PM URL

    海外で桜の木を見かけると、ふとふるさとが懐かしく思えますよね。
    どこか哀愁漂いつつも、温かい歌でとても気に入りました;)

  3. ドギーワーク 2010年4月5日 - 5:17 PM URL

    ご訪問そしてコメントありがとうございます。
    初コメントありがとうございます。
    桜は今や世界中で見られますが人を惹きつてやまない魅力がありますよね。
    鮮やかなピンク色。
    ひとときの間咲きそして風に舞うように散る。
    そんな桜は人々の心を和ませてくれる。
    そう感じますね。

  4. Aki 2010年4月5日 - 9:43 PM URL

    秋には紅葉を求めるように、桜は春を彩る最大の要素ですね。
    気象予報と同じように開花予報を行う日本は、やはり桜とは切っても切り離せない関係なのでしょうね。
    その散りゆく様を見ていると、どうしてもそこに日本を重ねて見てしまいます。
    慌ただしく気疲れの多い毎日も、そうやって桜を見ていると心が洗われ、日頃の悩みも消え去るようです。
    毎年、こうやってゆっくり桜を楽しむことができたら幸せですね。

  5. TOSHI@Boston 2010年4月6日 - 11:40 AM URL

    Akiさん
    先日は私のブログを訪問下さりありがとうございました。
    アーカンサーには仕事で一度、アーカンサー大学リトルロック校に行ったことがございます。
    ところで、大学院進学に興味をお持ちでしたら、ぜひ、カガクシャ・ネット(kagakusha.net)を覗いてみてください。メルマガも発信しています。ちなみに4月のメルマガは私が担当しております。
    大学での勉強を楽しみながらがんばって下さい!

  6. Aki 2010年4月6日 - 11:54 AM URL

    TOSHIさん、わざわざご訪問ありがとうございます。
    これも何かの縁なんでしょうか。
    アーカンソーを訪れられたことがあると聞き、嬉しくなりました。
    早速、カガクシャ.netでメルマガ登録をさせていただきました。
    サイトの方も今度じっくりと読んで勉強させていただきます。
    応援ありがとうございます!

  7. kaerunoniwa 2010年4月8日 - 12:21 AM URL

    先日は、私のサイトをお訪ねいただき、ありがとうございました。
    また「縦書きたい2」を使っていただき、感謝しております。併せてお礼申し上げます。
    さまざまのこと思い出す桜かな
    実は、学生時代に徒歩で木曽路を旅した折、ある小学校のさくらの木に結びつけられた木片に、この句がマジックの手書きで書いてありました。季節は秋だったのですが、ぱっとさくらの光景が浮かび、以来、春のたびにこの句を思い出します。
    こういう句や短歌を多く持っていることは日本の財産ですよね。

  8. Aki 2010年4月8日 - 4:18 PM URL

    わざわざご訪問ありがとうございます。
    ブログを書き始めるに当たって、どうしたら日本への思いを表現できるか。そう悩んでいたときに出会ったのが「縦がきたい」のウェブサイトでした。
    縦書きの日本語の美しさにあらためて感動させられました。
    日本人には、どこかもう深いところにしっかりと桜の姿が焼き付いているのでしょうね。芭蕉のこの句も、日本人だからこそ感じられる深いものなのでしょうね。この景色をずっと大切にしていきたい物です。
    これからもお世話になります。
    ありがとうございます。

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