オックスフォードな日々

とあるオックスフォード大学院留学生のブログ

【読書記録】日の名残り(カズオ・イシグロ著, 土屋政雄訳)

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なあ、あんた、わしはあんたのいうことが全部理解できているかどうかわからん。だが、わしに言わせれば、あんたの態度は間違っとるよ。いいかい、いつも後ろを振り向いていちゃいかんのだ。後ろばかり向いているから、気が滅入るんだよ。何だって?昔ほどうまく仕事ができない?みんな同じさ。いつかは休むときが来るんだよ。わしをみてごらん。隠退してから、楽しくて仕方がない。そりゃ、あんたもわしも、必ずしももう若いとはいえんが、それでも前を向き続けなくちゃいかん…

人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日で一番いい時間なんだ。足を伸ばして、のんびりするのさ。夕方がいちばんいい。わしはそう思う。みんなにも尋ねてごらんよ。夕方が一日で一番いい時間だって言うよ。

いかなる時も自らの職業的なあり方を貫き、それに耐え、主人のために使命を全うすることこそが執事の品格である。心の底から信じそして自身の人生に課したその価値観がしかし、旅を通じ人と出会い、過去に思いを巡らせ、そうしてその帰途で崩れ落ちていく。人間臭さを排除し欲を押し殺して滅私奉公に徹することこそ誇りだと信じて一所懸命に生きてきた筈なのに、旅の終わり、主人公は沈む夕日を桟橋から見つめながら涙を流す。「誇りと満足」は得たのだから誤ちだったとは決して認めたくない。しかし幸せそうに笑い合う群衆を見て、自分が犠牲にした人生の多くのことに思いを馳せる。この悲劇がそれでも素敵なのは、これからは少しずつでも人生を楽しむことを覚えよう、と沈んでいく日を涙で見送りながらも、明日を信じて終わるところ。

 

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著者紹介:

高専在籍時にAFSの53期生としてアメリカのオレゴン州で一年間地元の高校に通う。帰国後アメリカのアーカンソー大学フェイエットビル校に編入し2011年に理学士コンピューターサイエンス、2012年に教養学士心理学を修了。2012年秋よりオックスフォード大学にて、博士号課程で計算神経科学を勉強中。色々と大変ですが、常に色んな事に挑戦しながら精一杯頑張ってます。
詳しくは自己紹介ページよりどうぞ^^

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Aki • 2014年7月10日


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