オックスフォードな日々

とあるオックスフォード大学院留学生のブログ

世界最高都市としてのプライド?ロンドン大晦日カウントダウン花火ショー

あけましておめでとうございます。今回の大晦日もまた、ロンドンの年末カウントダウン花火大会に行ってきました。三河花火発祥の地である岡崎出身として「日本の花火は世界一」と信じて疑うこともなかった自分ですが、2年前にその迫力に圧倒されてしまった経験から今回もまた(笑)

そもそも日本とロンドンの花火を較べようとすること自体間違っていたのでしょう。二万発の花火を二時間かけて打ち上げる日本の花火鑑賞会と、一万二千発の花火をたった十分で打ち上げる花火ショーとでは、同じ花火でも全く質の違ったものです。

「ヨーロッパでは貴族の娯楽として園遊会などの際にお城の後ろで『花火』が上げられていたのに対し、四季それぞれの美しさを重んじる日本では、河川敷などで夏を彩るイベントに使われてきました。この様に文化的な背景が違いますので、『花火』への思いや楽しみかたが違っているのは当然のことです。海外ではエンターテインメントとして本当に華やかで楽しい、迫力のある花火が確立されています。日本では『美』を重視し、日本独自の技術を継承してきたことで、一発一発の花火にどの国の花火師も真似できない色や形、見せかたを実現しています」
外国の花火と日本の花火、何が違う?

日本の花火の歴史・三河花火

2013年に「長州五傑がUCLに密航留学してから150年」という記事を書いたけれど、実はこれに加えて2013年は実は日英交流四百周年の年でもあった。当時のイギリス国王・ジェームズ一世は1613年に日本に使者を送り、当時発明されたばかりの望遠鏡を家康に献上したという。そんな事からこれは同時に科学交流の四百年間であったという。実はその時、現代の花火に繋がる鑑賞用の花火も初めて日本にもたらされた

当時、国内で火薬の製造・貯蔵を許可されていたのは、家康の故郷である三河地方唯一。そんな背景から、花火はまず岡崎を中心とした三河地方で発達し、そこで培われた三河花火の技術がやがて日本中に広がっていったという(三河花火の歴史)。

 

今でも毎年8月の頭に開催される「岡崎城下家康公夏まつり花火大会」。水中に放たれ、あたかも美しい金魚が泳ぐがごとく水中を舞う「金魚花火」を見れるのはここだけ。何重にも輪郭が重なり、大きく花開く様に広がる「八重芯菊花型花火」も日本の技のみが成せる花火なのだとか。こんなこと言いながら僕自身は、岡崎市民でありながら河川敷でこの花火を見たのは実はたった二度だけ。アメリカに高校留学する直前と、そして帰国した年。まだ10代だったあの頃、色々な思いを抱きながら夜空に打ち上げられる花火を見上げていたことを思い出す。

Fireworks Japan

via 「教祖祭PL花火芸術~菊花壇~」 おかちゃん

そして、花火と言えば幼いころに読んだ手塚治虫の「ミッドナイト」の花火師たちのエピソードが思い出される。

花火に命を賭けた男の生きざまに、幼いながら胸を打たれた。

 

London New Year’s Eve fireworks

さて一方で、歴史的には日本に花火をもたらした側のイギリス。記録に残っているイギリスにおける最初の鑑賞用花火は、1486年国王ヘンリ七世の結婚式の際に打ち上げられたもの。継いだヘンリ八世の統治時代(1509-1547年)に花火人気は一気に高まり、1558-1603年に在位したエリザベス一世に至っては彼女自身が大の花火好きだったとか。そんなことから、いつでも花火大会を催せるように`Fire Master’(花火職人)が王室直属の役職として雇われるようになった。更に、日本に花火を伝えたジェームズ一世の孫ジェームズ二世の戴冠式では、卓越した花火ショーを指揮した`Fire Master’に「勲爵士」が与えられたほどだという。(Pyrotechnic Britain: A Brief History of Fireworks in the UK)

そんなこんなで花火は日本よりも長い歴史のあるイギリス。でも実は、ロンドンの大晦日花火ショーが開催されるようになってからの歴史はまだ浅い。最初の花火ショーが開催されたのは2000年。毎年このために大きな予算が組まれ、今回もその額なんと1.8mポンド(約3億円)。 ここまで力を入れる理由は、The Gurdianによると世界中の人々のロンドンへの憧れの心をこの魔法で掴むため」「世界最高の都市の一つであることを知らしめるため」と、なんともイギリスらしい。笑

ちなみにこの花火ショー、あまりの人気が故に2014年の大晦日からは完全チケット制に。2014年はそのことを知らず、気づいた時にはチケットは売り切れ。仕方がなくこの時はチケットゾーンの外、Blackfriars bridgeの西側からの鑑賞。今回はその反省を活かして早めにチケットを購入。10月の時点でもうすでにビッグベンの前の一番良いゾーンは売り切れていたので、これから行くことを考えている人はチケット購入をお早めに!今回のチケットの価格は一枚十ポンドで、一人四枚までオンラインで予約することができた。規約によると「転売や譲渡は禁止・入場時にチケット購入者の顔写真入り身分証のチェックがある」との事なので(実際にはなかったけど)、正規チケットを買いそびれて非正規ルートでチケットを探している人は注意が必要。

new year's fireworks london

今回入手出来たのはRed Zoneのチケット。このゾーンは入場口がEmbankment駅側とTemple駅側との二箇所があって、できるだけ花火ショーの中心地に近づきたかった僕たちはもちろん西側のEmbankment駅側から。入場時間は7時〜9時半までの間とあり、僕達が入場口に到着したのは8時半位だったのだけれど、この直後に西側入場口からの入場には制限がかかってしまった模様。この時点でゾーン内はこの人混み。

crowd at New Year's eve London

なんとかこの隙間をぬって、一応ロンドン・アイが見える場所まで。

New Year's Eve London

そして待つこと3時間。一年前は風もあってものすごく寒い思いをしたことから、今回はヒートテック+シャツ+セーター+ダウン+ウィンドブレーカーの5枚重ね。そしたら今回は気温はそこまで下がらずなんだか残念な気持ち。笑

「あと2時間」「あと1時間半」「あと1時間」「あと30分」「15分」「5分」「1分」..

そして向かいのビルに映しだされるカウントダウン。60 59 58 …

惜しむことなく夜空を照らす花火の数々。見ている誰もが体でリズムをとり始める。そして何よりも、花火で照らしだされるビッグベンのイケメン具合(笑)。一つ一つの花火をみたら日本の精巧な花火とは比較にもならないけれど、たった11分間に全てを詰め込む芸術センスと技術の高さは秀でている気がする。ロンドンの2倍の予算をつぎ込んでいるシドニーの大晦日花火大会の動画も見てみたけれど、「世界中の人々のロンドンへの憧れの心をこの魔法で掴む」と豪語するだけある。普段イギリスのケチばっかり言っているけれど、これを見せられると純粋に「イギリスかっこいい・・」と思ってしまう。ロンドンで年越しをする人は、是非この花火ショーに行ってみましょう。

それでは皆様、今年もどうぞ宜しくお願いします。素敵な一年にしましょうね!

 

・・・・もちろん、この「魔法の」11分間を終えたあとの帰り道、一面ゴミだらけの地面をみて一瞬で現実に引き戻されるのもイギリスですが。笑

DSC_1546

追記

twitter上で面白い関連情報を頂いたので紹介しておきます^^

 

追記2: 2016年の花火のチケットの購入方法

10/21から公式ウェブサイトでチケットの販売が開始されました。

London New Year’s Eve Fireworks 2016
https://www.london.gov.uk/events/2016-12-31/london-new-years-eve-fireworks-2016

良いゾーン(ブルーとかグリーンとか)はすぐに売り切れてしまうと思うので、行くことを考えている方はお早めに!

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著者紹介:

高専在籍時にAFSの53期生としてアメリカのオレゴン州で一年間地元の高校に通う。帰国後アメリカのアーカンソー大学フェイエットビル校に編入し2011年に理学士コンピューターサイエンス、2012年に教養学士心理学を修了。2012年秋よりオックスフォード大学にて、博士号課程で計算神経科学を勉強中。色々と大変ですが、常に色んな事に挑戦しながら精一杯頑張ってます。
詳しくは自己紹介ページよりどうぞ^^

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Aki • 2016年1月3日


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Comments

  1. ブルン ‏@brunbunby 2016年1月4日 - 3:03 PM

    記事読ませていただいたら、ヘンデルが聴きたくなりました。http://youtu.be/bDa3J2KJqxM

  2. Aki ‏@hogsford 2016年1月4日 - 3:06 PM

    そんな楽曲もあるんですね!英王室の花火好きはこういう事からもよくわかりますね(*^^*)
    「1748年にオーストリア継承戦争が終結し、イギリス国王ジョージ2世は、この祝典(花火大会)のための曲をヘンデルに依頼した。」 http://bokunoongaku.minibird.jp/?p=569

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