イギリスの地より大和をおもふ
先日帰省した際に、小学校の頃の文集に「二十五歳の自分」という一ページを見つけた。そこには奇妙なロボットの絵と共に、自分のへたくそな字で「ロボット発明家になる。」と記されていた。こんな頃から自分は今の夢の原型を持っていたのかと思うと、少し胸が熱くなる。そう言えばあの頃の自分は、自分の可能性を信じて止まなかった。必ず、自分は成功するのだという根拠もない自信を持っていた。だからそんな頃からMITに入ると豪語し、努力する道を選んだのであった。
二〇一二年五月、自分はアーカンソー大学を卒業した。計算機科学と心理学の重専攻であったため、この四年間での取得単位数が一八〇を超えた。一方で論文も複数発表し、プログラミングコンテストでも成果を出し、好成績を維持しながらTAとして学生を教える経験も積んだ。自分の中で思いつく限りの全ての理想を達成することが、学部時代の唯一の目標だった。その結果に対して、いくつかの大企業や一流大学からの誘いを受けたが、一方で長年の夢だったMITからは、インタビューの声さえかからなかった。そして、全てが崩れ落ちるような幻想に襲われた。
「この世は何でもかんでも自分の思い通りにはならない。」と誰もが口にするが、自分はそうは考えない。「子曰く、人能く道を弘む。道の人を弘むるに非ず。」と説かれるように、道が人を大きくするのではなく、人が努力することによって道ができる。大成しないのは、単純に自分に何らかの非があるだけだと信じるからだ。おそらくMITが求めていたものは学業成果のみならず、自分が勉強のために限りなく削ってきた遊びや人との交流を通じて学ばれる心の豊かさであったのかもしれない。
しかし一方で、そんな自分を評価してくれた学校もあり、自分はその中からオックスフォード大学の博士号課程に進学することを決定した。計算神経科学という、今までと同様人工知能に関連する分野でありながら、自分にとっては全く新しい分野での研究に取り組むこととなる。先日渡英してきたばかりであるが、早速いくつもの新しい発見がある。本日より、このブログのタイトルは「イギリスの地より大和をおもふ」に改める。勉学だけではなく、こういった文化交流も通じて心の豊かさや遊び心も磨けることが、ここでの一つの目標である。
関連記事
著者紹介:
高専在籍時にAFSの53期生としてアメリカのオレゴン州で一年間地元の高校に通う。帰国後アメリカのアーカンソー大学フェイエットビル校に編入し2011年に理学士コンピューターサイエンス、2012年に教養学士心理学を修了。2012年秋よりオックスフォード大学にて、博士号課程で計算神経科学を勉強中。色々と大変ですが、常に色んな事に挑戦しながら精一杯頑張ってます。
詳しくは自己紹介ページよりどうぞ^^




