オックスフォードな日々

とあるオックスフォード大学院留学生のブログ

サボらなければ無料という英単語学習サイト「Be the Brain」を使い始めて4ヶ月

※残念ながらこの記事で紹介するオンラインサービス「Be the Brain」のサービスは終了してしまいました・・・(泣)

「英語圏に行けば、英語なんて誰でもできるようになる。」なんていう話をよく聞きますよね。確かに英語圏で暮らすようになれば、聞く能力は格段に伸びます。そして話す能力も上がります。学校で勉強していればいろいろな専門用語も身につけるでしょう。それは間違いのないことだと思います。

ただ語彙力だけは、普段使う機会のない語彙などに関して言うと特に、意識的に学び続けない限り伸びないものだと思っています。むしろ英会話ができるようになることは逆に、語彙がなくてもそれを何とか説明できるようになってしまうのでそれが単語を覚えるという機会も奪ってしまうとさえ思っています。例えば「カマキリ」という言葉。幼い頃から海外育ちをしていれば自然と身につくかもしれないこの言葉も、大学生活ではまず使われることは無いので、留学生でもこれを英語で言えない人は多くいると思います。仮にそんな留学生がいざそれを説明しなければいけなくなった時、英語がまだ喋れなければ辞書を引いて”mantis”という言葉を覚えるでしょう。一方で少しでも英会話ができるようになってくると、”You know.. the grasshopper like insect that has hooks on their hands..”とか何とか言えば通じてしまい、その時に教えてもらったとしても意識的に覚えようとしない限りすぐに消えていってしまいます。少なくとも僕はそういうタイプの人間でした。笑

まぁそんなこんなで、留学中であっても専攻の勉強とは別に語彙の勉強だけは続けることはとても重要なことだと思っています。僕がアメリカの学部留学を始めた当時、今では有料になってしまったiKnow!というオンライン上の英単語学習サイトが無料で便利な学習プラットフォームを提供していたのでそれを使っていました。有料になってからは、DSの「アルクの10分間英語マスター」というソフトで勉強したり、GRE(北米大学院共通試験)の単語カードを買って勉強していました。

bbrain1
(マイナビニュース)

でも今年に入ってからは、マイナビニュースで紹介されていた新しいオンラインの単語学習サイトで勉強を始めて今日で4ヶ月もたつので、興味がある人のために紹介します。それは「Be the Brain」というウェブサイト。特にずば抜けて素晴らしいわけでもないのですが、個人的に惹かれたのは「学び続ける限り無料!」と説明されるその変わったシステム。どういうことかというと、このサイトに登録すると毎日一通の学習サイトへのメールが送られてくるのですが、それをサボらずに続けることが出来ればいつまでも無料で使い続けられるというもの。一方で、月に3日以上連続でサボってしまうと、その月は1,050円の利用料を支払わなくてはいけないというのです。

僕は以前の記事で紹介した「Coursera」というオンラインコースウェアで学ぶことがとても好きなのですが、実は今までに何度も途中でコースを放棄してしまっています。研究が忙しくなってとか試験があってとかその都度色々な理由を連ねるのですが、一番の理由は僕の場合、放棄することに対するpunishmentが一切無いことなんだと思っています。例えば大学で授業を受ける場合であれば、適当に授業を受ければGPAに響くというpunishmentがあります。研究をサボる場合であれば、教授やラボの仲間からの評価が落ちるというpunishmentがあります。このpunishmentというものは発達心理学などにおいて精神的な影響から幼児教育では出来る限り避ける事が推奨されますが、reinforcementと同様に習慣を変える目的のためにはかなり重要な役割を持っているのです。

動物が行動習慣を形成するメカニズムとして「オペラント条件付け」というパラダイムがよく言及されますが、それに基づくと

動物の特定の行動習慣の傾向を高めたい場合は、
1. その特定の行動に対して報酬を与えるPositive reinforcement
2. その特定の行動に対して現状の不快を取り除くNegative reinforcement
の2通り

一方で特定の行動習慣の傾向を抑制したい場合
3. その特定の行動に対して罰を与えるPositive punishment
4. その特定の行動に対して現状の快適なものを取り除くNegative punishment
の2通りがその根本として説明されます。

Positive Negative
Reinforcement
Punishment

このパラダイムを単語学習習慣形成に適応して考えてみるとみると、

学習を続けることへのreinforcementの応用として
1. 毎日続ける度に報酬を与える (positive reinforcement)
2. 月の始め等に月額料金を払わせ、毎日続ける度に返金する (negative reinforcement)

サボりぐせをなくすためのpunishmentの応用として
3. サボることで課金する (positive punishment)
4. 最初に報酬を与えておき、サボる度に報酬が減っていく (negative punishment)

などが考えられます。そして、サービスとして現実的なのは2か3。この「Be the Brain」というサイトはこの3つめの手法を取り入れているわけです。これは利用者にとっても単語学習のサボりぐせを矯正するという意味で美味しく、サービス提供側としてもサボりぐせのある人からの一定の収金を期待できることから美味しく、なかなか良い仕組みだなぁ、と思ったりするわけです。

一方でこのサイトは、問題出題の仕組みを「脳医学に基づく」と説明し、そこには少しだけ苦笑い。どういうことかというと、出題される問題が心理学で説明される「忘却曲線」に基いているということで、そのお陰で効率的に学んだ単語を短期記憶から長期記憶へと変えていくことが出来るというのが売りのようです。それ自体に全く異論は無いのですが、この記憶の仕組みはもう一世紀以上も前の1885年にEbbinghausが発表した実験にさかのぼるため、どうも「脳医学」といかにもな言葉が使われると少しだけ苦笑いしてしまうのです^^; その実験で彼は、記憶と忘却の時間的関係を測定するために、意味を成さないアルファベット3文字からなる単語を大量に暗記し、記憶後1日の間に急激な忘却が発生するがその後はとても緩やかな忘却が起こることを発見し、それを「忘却曲線」と呼んだわけです。

出題形式が「忘却曲線」に基づいているということは、間違えた単語は間違えなくなるまでひたすら毎日出続け、正解すると数日後に、正答率が上がってくると更に数週間後、数カ月後、と出題される頻度が変わってくるというわけです。問題の出題形式はウェブサイト上でも説明されるように、

  1. 英語から日本語の意味を選ぶ4択
  2. 日本語の意味から英語を選ぶ4択
  3. 英語の発音を聞いて日本語の意味を選ぶ4択
  4. 英語の発音を聞いて英語を選ぶ4択
  5. 日本語の意味から英語を入力

の5通りがあり、英語を定着させるためにはなかなか便利です。

ただ、個人的に不満があるのは、5の英語入力の問題
例えば「握る」と問題が出るだけでは、果たして”grasp”と打つべきか”grip”と打つべきか分からず答えを誤ることがある点。ここはDSのアルクの単語学習ソフトの様に単語の文字数を明記したり、始めか最後のアルファベットを表記したりなどの改善を期待したいところ。

下の画像は僕の過去一ヶ月間の毎日の出題数を示しています。今のところ大体一日に80前後の問題で、10分前後でできる量です。

bbrain2

 

そんなこんなで気づけば4ヶ月もほぼサボらずに続いているので、自分には結構向いているプラットフォームな気がします。サービス側としてみたら、サボらないからお金を落とさない全く嬉しくないユーザーですけど、三年間をかけて最後まで全部暗記させるプログラムらしいので、気長にコツコツ続けたいと思っています。笑

ちなみに特別なリンクから友達を3人紹介すれば、サボった時のペナルティはなくなるそうですが、僕は絶対にしません。笑 そんなことしたらpunishmentが無くなってサボってしまいそうですからね。笑

興味のある方はおためしコースもあるのでぜひ試してみてください^^ → http://bbrain.jp/

※残念ながらこの記事で紹介するオンラインサービス「Be the Brain」のサービスは終了してしまいました・・・(泣)

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著者紹介:

高専在籍時にAFSの53期生としてアメリカのオレゴン州で一年間地元の高校に通う。帰国後アメリカのアーカンソー大学フェイエットビル校に編入し2011年に理学士コンピューターサイエンス、2012年に教養学士心理学を修了。2012年秋よりオックスフォード大学にて、博士号課程で計算神経科学を勉強中。色々と大変ですが、常に色んな事に挑戦しながら精一杯頑張ってます。
詳しくは自己紹介ページよりどうぞ^^

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Aki • 2013年5月12日


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