アメリカ学部留学2 大学選び – 学費と大学ランキング
アメリカの大学の名前聞いてピンとこなくても…
「留学をしたい」と思いがあっても、「どうやって大学を選べばいいんだろう・・」「どれくらいお金がかかるんだろう・・。」という人は多いと思います。そこで、少しでもそういう人たちの役に立てればと思って今回は学校選びに関するアドバイスです。
ちなみにこれはアメリカの「学部留学」の際の大学選びであって、大学院になるとまた話は別になるので、そちらのお話はまた機会があれば。
というわけでまず最初に・・、
– シカゴ大学
– ノースウェスタン大学
– ミシガン大学
– ワシントン大学
– テキサス大学
これらの大学の名前を見ただけで、それぞれが世界でどの程度評価されている大学か分かりますか?
「耳馴染みないけど・・そんな風に聞くくらいだから、日本の早慶レベルとか?」
なんて思った人、結構いるんじゃないでしょうか。
個人的に大学世界ランキングなんてものは評価方法が偏っていたりとあんまり好きではないのですが、例えばこれらの大学はどれもTimes Higher Education World University rankingsという世界の大学番付において、日本のどの大学よりも高く格付けされている大学です。
一体何でこんな事を紹介したのかというと、アメリカの学部留学を希望している人はまず日本の大学受験において当然のように蔓延している学校名至上主義みたいな考え方を捨てた方がいいと思っているからなのです。アメリカへ学部留学した人でも、一般的に「名門校」といわれる大学に行った人だと相変わらずこの傾向は強いようですが、少なくともアメリカのど田舎の大学を出た僕の目から見ると滑稽にさえ見えてしまいます。
もちろん金銭的にも実力的にも問題がなく「名門校」行けるようなら行くべきだと考えています。しかし、大学を選ぶ際に頭に入れておいたほうがいいことは、そこまで高い学費を出さなくても、日本では無名の大学であっても、それらの名門校に肩を並べられる可能性のある大学はアメリカ国内にいくらでも存在するということです。
アメリカの大学の選び方
ただアメリカには4年制大学だけでも2500近くの大学があり、まさにその質はピンからキリまでです。ですから重要になってくる問題は、その基準をどこに見出すかということです。その選択方法として、僕がアドバイスしたいことは2点です。
- U.S. Newsなどのアメリカ国内の大学ランキングで100番前後に入っているかどうか。
- 大学における学問をバックアップする大企業が同じ地域にあるかどうか。
1. アメリカ国内の大学ランキングで100番前後に入っているかどうか。
まず一つ目の「アメリカ国内の大学ランキングで100番前後に入っているかどうか。」という点については、元々留学前に他の人から教えてもらったものでした。その彼曰く、「アメリカ国内で上位100番前後の大学であれば、就活で学校名が足かせになることもないし、大学院に行きたければ本人次第でどこにでも行ける。」と。最初は半信半疑でしたが、仮にそうであるとするのであれば1番と100番の大学とでは学費も何倍にも変わってくることもあり、僕は彼の言葉を信じてみる事にしたのです。そして、結論から言うとその「100番」という数字は非常に的確だった、というのが僕の率直な感想です。
それをはっきりと認識したのは、3年生の時に全米からコンピュータ・サイエンスを学ぶ傑出した学部生を選出するCRA Outstanding undergraduate Researcher Awardsにおいて優秀賞受賞の栄誉にあずかった時のことでした。実は、この時の受賞者の出身学校をUS newsのランキングと共に見てみるとなかなか面白い傾向があるのです。
US news 2012-2013におけるランキング順に受賞者を出身学校を見てみると、ハーバード、プリンストン、MITなどのいわゆる名門校の名前が並ぶのは当然なのですが、下を見てみると面白いことに最後の3つの学校を除けば全てが150番以内にランクされている大学なのです。
もちろんこの一例を持って100番前後という数の正当性を主張するのは無茶な話ですが、2500ある大学の中で、この50校前後の中に300番や400番の大学ではどうも入りそうもないことは何となく感じられるのではと思います。
そして更にアメリカの上位100校をTimes Higher Education World University rankingsと照らしあわせてみると、おおよそアメリカの100位は世界の大学の300位程度と重なります。
参考までに日本の大学のTimes Higher Education World University rankingsにおける世界ランキングを見てみると、
27 東京大学
54 京都大学
128 東京工業大学
137 東北大学
147 大阪大学
201-225 名古屋大学
251-275 首都大学東京
276-300 東京医科歯科大学
301-350 北海道大学、九州大学、筑波大学
351-400 慶應義塾大学、早稲田大学
となります。
先程も書いたように僕はこういう大学の世界ランキングの類を絶対的なものだとは一切思っていないのですが、一つの指標としてこうやってアメリカの上位100前後の”無名”大学が日本の名のある大学と同等に評価されている現状は無視できません。
「アメリカの田舎の大学なんて英語が出来れば誰でも入れるじゃないか。」と思う方もいるかもしれませんが、そもそも大学は「入れるか」「入れないか」で議論するべきものでは無いのでしょう。良い大学に合格することはあくまでも良い環境で学ぶ権利を得たという事でしかなく、それ以上でも以下でもないと僕は考えています。その権利を無駄にする人は「いい大学」に受かっていようが誇るべきものはあまりなく、逆に有名大学でなくてもそこで必死に頑張っている人は結果評価されてしかるべきと個人的には思っています。
これらの日本では「無名」のアメリカの大学は、日本の同等に評価されている大学と比べれば相当簡単に入れます。しかし、大学とは学問をする場です。アメリカの大学時代、初めて出会った学生が名前の次に聞くことは決まって「専攻は何?」「何を勉強しているの?」という質問でした。それほどまでに、これらのアメリカの大学生の生活は学問を中心に回っているのです。
更にアメリカらしい出る杭をもっと引っ張りだすような文化が幸して、挑戦したい人はみな思う存分挑戦していきます。「アメリカ学部留学3 オナーズプログラムのススメ」で紹介するオナーズプログラムというのもそのまさにいい例です。だから、もちろん日本でも必死に頑張っている多くの学生たちの事を僕は知っていますが、そんなアメリカの大学のやる気を掻き立てる環境が結果として多くの人に成果を出させ、このように日本では無名の学校が世界で評価されるようになったとしても何ら不思議はないと思っています。
「そんな事を言ったって、日本じゃ結局学名至上主義だから田舎の大学だと就活とか不利でしょ」という不安はあるかもしれませんが、これもやり方次第です。
僕自身は就活は行なっていないため詳しいことは述べませんが、例えばアメリカ国内では毎年、200以上の企業が集まるボストンキャリアフォーラムというものが行われています。ここに2012年度の参加企業のリストがありますが、アーカンソー大学の日本人の多くの知人達はこのたった数日間の間にいくつもの大手企業からの内定を貰っています。日本では「無名の田舎大学」が、ここでは立派な武器として活躍するのです。彼らはアメリカ国内の100番前後の大学の学生の強さを知っているのです。
これは大学院に進学する場合においても同じ事が言えます。
そしてこれは、冒頭にあげたアドバイスの2点目「2. 大学における学問をバックアップする大企業が同じ地域にあるかどうか。」にも関連してきます。
2. 大学における学問をバックアップする大企業が同じ地域にあるかどうか。
学校の財政状態というものは、その学校で行える研究の質に大きな影響を与えます。アメリカの大学の場合、強い大学の基本的に大きな企業から財政的な支援を受けているケースが殆どであると僕は認識しています。
例えば、僕の通っていたアーカンソー大学の場合、世界最大のスーパーマーケットチェーン店のウォルマート、米食肉加工最大手のタイソン・フーズ、全米最大級の陸上輸送会社J.B.HUNT、世界最大級のデータベース・マーケティング会社のAcxiomなどの企業の本社が州内にあり、そのどれもが様々な方面から大学をバックアップしています。2002年にはウォルマートの創始者のウォルトン一族から3億ドルの寄付まであり、この額は全米の州立大学の中で過去最高額であったそうです。
先日EUが発表した脳の全貌を解明するための10年をかけた欧州最大級の科学プロジェクトへの出資額が6億ドルだったことを考えると、この額の凄さが際立ちますよね。僕の勉強していたコンピュータサイエンスの建物はJ.B. Huntのお金で建設され、コンピュータラボの設備はAxciomによって充実させられており、こんな事実からも地元の大企業の大学研究への影響力を察することが出来るのではと思います。
こういう背景から研究費は豊富に支給されましたし、海外での学会発表にも何一つ嫌な顔をせずドイツ、ポーランド、カナダと何度でも送り出してくれました。そのお陰で沢山の貴重な経験をすることができ、結果として様々な大学や企業からの勧誘の声がかかることにつながりました。これも海外の面白い点で、目立った学生を見つけると彼らは躊躇なくコンタクトを取ってきます。そして繰り返しになりますが、こんな経験を出来たのはやはり大学にお金があり、研究を思い通りにさせてくれたからなのです。
そして、もう一点加えると、こういう大学の魅力は、学費が「名門校」に比べると格段に安いことにもあります。参考までに僕がアメリカ4年間で2つの学士を授与されるまでに費やしたお金を、学費、食費、居住費、その他雑費全てを足しあわせると$70,278(当時のレートで約560万円)でした。そこから留学中に学内外から頂いた奨学金や研究費、TAの給料等を差し引くと、$62,718.63です。通常通りに学士ひとつを取るのであれば、これよりも更に安くなります。この額は「名門校」の一年の必要額と対して変わらないのです。
参考までに、「大学4年間でかかる学費・生活費はいくら?」という記事によると、日本で国立の大学に進学した場合であっても一人暮らしをすれば4年間合計で約1002.1万円だと言うので、一言で留学と言っても、こういった田舎大学に進学すれば経済的負担は抑えることが十分可能なのです。
「女子大生「仕送り月25万じゃ足りない件」」というまとめ記事は誇張もあることでしょうが、もし仮に仕送り月25万円(学費は別)を使いきってしまうようであるのなら、さっきの額を単純に割ってみても月額15万円程度(学費込み!)なので、下手な話アメリカ行ったほうがよっぽど安いということも十分にありえるわけです。
(追記:編入者へのin-state特典はどの大学にもあるものではなく、アーカンソー大学の用意する”New Arkansan Non-Resident Tuition Award Scholarship” (http://nrta.uark.edu/) という特別な制度でした。他の大学でも似たような制度を用意しているところはあるかもしれませんが、誤解を招く記述申し訳ありませんでした。)
そんなわけで、アメリカ学部留学という選択肢も結構現実的な選択肢だと思ってます。
非常に長くなりましたが、これから留学を考える方々の参考になれば嬉しいです。
質問等あればお気軽にコメントください^^
追記1:
学費は毎年上がりつづけているので、その点を気をつける必要はあります。
例えば、アーカンソー大学の学費もここ数年で以下の様に上がってきています。
2010 – $6,459 In State / $15,337 Out of State Tuition and Fees. 0.9% Annual Increase
2009 – $6,400 In State / $15,278 Out of State Tuition and Fees. 6% Annual Increase
2008 – $6,038 In State / $14,492 Out of State Tuition and Fees. 4% Annual Increase
2007 – $5,808 In State / $13,942 Out of State Tuition and Fees. 5.7% Annual Increase
2006 – $5,494 In State / $13,222 Out of State Tuition and Fees. 7% Annual Increase
2005 – $5,135 In State / $12,425 Out of State Tuition and Fees. 7.7% Annual Increase
追記2(2017/02/06):
読者の方より「ブログの記事では「大学の評価・授業料・地元企業のバランス」
今考えると、例えばパブリック・アイビー(http://www.
アメリカ学部留学記事:
著者紹介:
高専在籍時にAFSの53期生としてアメリカのオレゴン州で一年間地元の高校に通う。帰国後アメリカのアーカンソー大学フェイエットビル校に編入し2011年に理学士コンピューターサイエンス、2012年に教養学士心理学を修了。2012年秋よりオックスフォード大学にて、博士号課程で計算神経科学を勉強中。色々と大変ですが、常に色んな事に挑戦しながら精一杯頑張ってます。
詳しくは自己紹介ページよりどうぞ^^