【読書記録】車輪の下 (ヘルマン・ヘッセ著, 実吉捷郎訳)
だれひとりとして、このやつれた童顔の哀れな微笑のうらに、沈みかけた魂が悩んでいるのが、そしておぼれようとしながら怯えて絶望的にあたりを見回しているのがみえなかった。そしてまた誰ひとりとして、学校と父親や二三の教師たちの野蛮な名誉心とが、この傷つきやすい人間をこんなことにしてしまったのだということを夢にも考えなかった。
何故彼はもっとも感じやすい、そしてもっとも危険な少年期に、毎晩、深更まで勉強しなければならなかったのか。なぜみんなは、彼の買っていたウサギを取り上げたのか。ラテン語学校での仲間と、わざわざ彼を疎遠にしてしまったのか。彼に釣りやぶらぶら歩きを禁じたのか。そしてけちくさい、性根を枯らすような功名心という、空虚な、卑俗な理想を、彼の胸に植えつけたのか。
過度に駆り立てられた仔馬は、これでもう道端に倒れてしまって、これ以上使い物にならなくなったのである。
幼い頃から皆に期待され自らもその先にある夢を見て全てを捨てて勉学に励んだ神童が、悩み葛藤し疲弊して、そして堕ちていく様が辛すぎる。いつの時代もみんな同じような事で悩んだり苦しんだりしてるんだなあと。そういう感情を文学や音楽、絵画とかを通じて昇華させられる著者の才能に感嘆。
著者紹介:
高専在籍時にAFSの53期生としてアメリカのオレゴン州で一年間地元の高校に通う。帰国後アメリカのアーカンソー大学フェイエットビル校に編入し2011年に理学士コンピューターサイエンス、2012年に教養学士心理学を修了。2012年秋よりオックスフォード大学にて、博士号課程で計算神経科学を勉強中。色々と大変ですが、常に色んな事に挑戦しながら精一杯頑張ってます。
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