オックスフォードな日々

とあるオックスフォード大学院留学生のブログ

【読書記録】天空の蜂(東野圭吾)

51bCo-tv3KL._SS500_

絶対に落ちない飛行機があるかい?ないよな。毎年多くの死者が出ている。それに対して、おまえたちのできることは何だ?落ちる確率を下げていくことだろう。だけどその確率をゼロにはできない。乗客はそれを承知で、その確率ならば自分は大丈夫だろうと都合よく解釈して乗り込むわけだ。それと同じなんだ。俺たちにできることは、原発が大事故を起こす確率を下げることだけだ。
原発が大事故を起こしたら、関係のない人間も被害に遭う。いってみれば国全体が、原発という飛行機に乗っているようなものだ。搭乗券を買った覚えなんか、誰にもないのにさ。だけどじつは、この飛行機を飛ばさないことだって不可能じゃないんだ。その意志さえあればな。ところがその意志が見えない。乗客たちの考えがわからないんだ。一部の反対派を除いて殆どの人間は無言で座席に座っているだけだ。腰を浮かせようともしない。だから飛行機はやっぱり飛び続ける。そして飛ばす以上、俺たちにできることは最善を尽くすことだけなんだ。

二束三文の正義を語り自らに酔いしれる者とそれを横目に沈黙を決め込む群衆。その狭間で人知れず闘う技術者の葛藤がここにある。今ある幸せが一体誰の手によって生み出されたのか、そしてその為に一体誰が犠牲を払ったのか。幸せを先に与えられる平和ぼけしたこの国でそれらのことはあまりにも蔑ろにされてきた。覚悟もなくその幸せに生きる人々の目には、その幸せの代償やそれ生む為に命を賭す人達の姿は映らない。彼らは、人々のその覚悟を杞憂に終わらせるために人生や家族を振り回してまで闘っている。その尊さを決して忘れてはならないと考えさせられる物語。

関連記事


著者紹介:

高専在籍時にAFSの53期生としてアメリカのオレゴン州で一年間地元の高校に通う。帰国後アメリカのアーカンソー大学フェイエットビル校に編入し2011年に理学士コンピューターサイエンス、2012年に教養学士心理学を修了。2012年秋よりオックスフォード大学にて、博士号課程で計算神経科学を勉強中。色々と大変ですが、常に色んな事に挑戦しながら精一杯頑張ってます。
詳しくは自己紹介ページよりどうぞ^^

follow on facebook follow on line
follow via RSS follow us in feedly Subscribe with Live Dwango Reader

Aki • 2014年4月9日


Previous Post

Next Post

コメントを残す

Your email address will not be published / Required fields are marked *

*