オックスフォードな日々

とあるオックスフォード大学院留学生のブログ

【読書記録】異邦人(カミュ著, 窪田啓作訳)

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君は死人のやうな生き方をしてゐるから、自分が生きてゐると云ふことにさへ、自信がない。私はと云へば、兩手は空つぽのやうだ。しかし、私は自信を持つてゐる。自分について、すべてについて、君より強く、また、私の人生について、來るべきあの死について。さうだ、私にはこれだけしかない。しかし、少なくとも、この眞理が私を摑へてゐると同じだけ、私はこの眞理をしつかり摑へてゐる。私は全て正しかつたし、今もなほ正しい。いつも、私は正しいのだ。私はこのやうに生きたが、また別な風にも生きられただらう。私はこれをして、あれをしなかつた。こんなことはしなかつたが、別なことはした。そして、その後は?私はまるで、あの瞬間、自分の正當さを證明されるあの夜明けを、ずうつと待ち續けてゐたやうだつた。

正直に誠実に生きることを自分に課すと、時折、心と体との間に隔たりをおこうと懸命になっている自分を見つけることがある。それは客観的に自分を見つめることで、感情や言動を自分の信じる理想と寸分たりとも違わないものにしたいと願うから。この物語の主人公は、適度に肩の力を抜いて自然体で生きるという普通のことが普通にできない不器用な人間。彼の目に映っている本当の彼自身は、普通の器用な人間の為の社会の中で偽りの色に塗り替えられる。そうして異邦人は誰にも気付かれぬまま葬り去られていくという悲劇。


著者紹介:

高専在籍時にAFSの53期生としてアメリカのオレゴン州で一年間地元の高校に通う。帰国後アメリカのアーカンソー大学フェイエットビル校に編入し2011年に理学士コンピューターサイエンス、2012年に教養学士心理学を修了。2012年秋よりオックスフォード大学にて、博士号課程で計算神経科学を勉強中。色々と大変ですが、常に色んな事に挑戦しながら精一杯頑張ってます。
詳しくは自己紹介ページよりどうぞ^^

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Aki • 2014年6月11日


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