【読書記録】アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス著, 小尾芙佐訳)
知能だけではなんの意味もないことをぼくは学んだ。あんたがたの大学では、知能や教育や知識が、偉大な偶像になっている。でも僕は知ったんです、あんたがたが見逃しているものを。人間的な愛情の裏打ちのない知能や教育なんてなんの値打ちもないってことをです。…
知能は人間に与えられた最高の資質のひとつですよ。しかし知識を求める心が、愛情を求める心を排除してしまうことがあまりに多いんです。これはごく最近僕がひとりで発見したんですがね。これを一つの仮説として示しましょう。すなわち、愛情を与えたり受け入れたりする能力がなければ、知能というものは精神的道徳的な崩壊をもたらし、神経症ないしは精神病すらひきおこすものである。つまりですねえ、自己中心的な目的でそれ自体に吸収されて、それ自体に関与するだけの心、人間関係の排除へと向かう心というものは、暴力と苦痛にしかつながらないということ。
この物語は知的障害を持った一人の男の変化を通じて、人間の知性と心というテーマを探求する。男はただ純粋に、賢くなれば人からより愛されて幸せになると信じていた。しかし世界を知って広げようと一生懸命になるほど、それが段々狭くなっていってしまうこともある。見えないからこそ見えてた世界が、見えたからこそ見えなくなってしまうから。彼の急激な知性の増大は、彼の精神の成長を置き去りにした。彼の渇望したその一見輝かしい世界で、彼は愛に飢え、孤独を苦しみ、そして崩壊していく。そんな人生の皮肉を通じて幸せとは何かを問う。
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著者紹介:
高専在籍時にAFSの53期生としてアメリカのオレゴン州で一年間地元の高校に通う。帰国後アメリカのアーカンソー大学フェイエットビル校に編入し2011年に理学士コンピューターサイエンス、2012年に教養学士心理学を修了。2012年秋よりオックスフォード大学にて、博士号課程で計算神経科学を勉強中。色々と大変ですが、常に色んな事に挑戦しながら精一杯頑張ってます。
詳しくは自己紹介ページよりどうぞ^^




