【読書記録】変身(東野圭吾著)
あんたには分からないさ。脳を特別の存在と考えてはいけない、なんていってるあんたにはな。脳はやっぱり特別なんだ。あんたに想像できるかい?今日の自分が、昨日の自分と違うんだ。そして明日目が覚めた時、そこにいるのは今日の自分じゃない。遠い過去の思い出は、全部別人のものにしか過ぎなくなる。そんな風にしか感じれないんだ。長い時間をかけて育ててきたものが、ことごとく無に帰す。それがどういうことか、わかるかい?おしえてやろうそれは…
…それは死ぬってことなんだよ。生きているというのは、単に呼吸しているとか、心臓が動いているとかってことじゃない。脳波が出ているってことでもない。それは足跡を残すってことなんだ。後ろにある足跡を見て、たしかに自分がつけたものだとわかるのが、生きているということなんだ。だけど今の俺は、かつて自分が残してきたはずの足跡を見ても、それが自分のものだとはどうしても思えない。二十年以上生きてきたはずの成瀬純一は、もうどこにもいないんだ
生物にとって死とは、生体を維持する生物学的機能の終わりであるとされる。しかし人間にとって「生きる」ということは、同時にその意味の探求でもある。自分が生きている理由や、生きてきた理由。そんな問いかけは時に自分を無価値にし、しかし時にそれこそが明日を生きることへの原動力にもなる。「世の中には理不尽な目にあっている人間は数多くいる。皆その理不尽さに腹を立てながら、その怒りをエネルギーにして生きているんだ。」そうやって失敗や成功、苦悩と歓喜を繰り返した自分の人生の連続性の上の今日だからこそ、人は生きてきたことを実感し、生きていることを認識できるのだろう。
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著者紹介:
高専在籍時にAFSの53期生としてアメリカのオレゴン州で一年間地元の高校に通う。帰国後アメリカのアーカンソー大学フェイエットビル校に編入し2011年に理学士コンピューターサイエンス、2012年に教養学士心理学を修了。2012年秋よりオックスフォード大学にて、博士号課程で計算神経科学を勉強中。色々と大変ですが、常に色んな事に挑戦しながら精一杯頑張ってます。
詳しくは自己紹介ページよりどうぞ^^




