オックスフォードな日々

とあるオックスフォード大学院留学生のブログ

【読書記録】裏庭 (梨木香歩 著)

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あらわになった傷は、その人間の関心を独り占めする。傷が、その人間を支配してしまうのだ。本当に癒やそうと思うなら、決して傷に自分自身を支配させてはならぬ。..


無理に治そうなんてしないほうがいい。薬つけて、表面だけはきれいに見えても、中のダメージにはかえって悪いわ。傷を持ってるってことは、飛躍のチャンスなの。だから、十分傷ついている時間をとったらいいわ。薬や鎧で無理にごまかそうなんてしないほうがいい。..鎧にエネルギーを取られていたら、鎧の内側のあなたは永久に変わらないわ。..


私には、ある時期、たしかに鎧が必要だった。けれど、鎧を着ているっていう自覚がないときは、私ではなく、鎧の方が人生を生きているようなものだったのね。

誰もが心の内側に、その人しか知り得ない「裏庭」を持っている。そして、そんな庭の土を深くまで掘り起こすと、辛さのあまり忘れてしまおうとした悲しい傷がひっそりと埋まっていたりする。「児童文学ファンタジー大賞作品」と聞いていたから、万人受けするような当り障りのないテーマを扱った作品を想像していたけれど、いい意味で期待を裏切られた。この童話の根底には、「僕たちは“傷”といかにして向き合って生きてゆくべきか」という問いがある。「癒やし」を語ったまやかしや「鎧」を纏ったごまかしでは傷そのものの形を変えることはできない。「真の癒しは鋭い痛みを伴うもの」。それでも傷を恐れず支配されず、そして育んでいくことができれば、きっとその「傷」はやがて糧となりより美しい花々がその裏庭には咲き誇るようになる、と教えてくれる物語。


著者紹介:

高専在籍時にAFSの53期生としてアメリカのオレゴン州で一年間地元の高校に通う。帰国後アメリカのアーカンソー大学フェイエットビル校に編入し2011年に理学士コンピューターサイエンス、2012年に教養学士心理学を修了。2012年秋よりオックスフォード大学にて、博士号課程で計算神経科学を勉強中。色々と大変ですが、常に色んな事に挑戦しながら精一杯頑張ってます。
詳しくは自己紹介ページよりどうぞ^^

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Aki • 2015年10月18日


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