【読書記録】終わりのない旅 (吉田都)
バレエは、言葉を使わずにストーリーや感情を表現し、伝える芸術です。そして、バレエの物語に登場するキャラクターには、ファンタジーの主人公たちのなんと多いこと。だからこそのトゥシューズなのです。高貴なお姫様の品格のある佇まいや、この世のものではない妖精の浮遊感。その表現を可能にするためには重力を感じさせず、天から吊られているようななめらかな動きが必要です。そのために、常に体の中心部分を高く引き上げ、糸のように細い軸でバランスを保って踊ります。その時の、地面とのぎりぎりの接点が、トゥシューズの先端。そこから表現は、天高く延び、広がります。そして、キラキラとした非日常感が求められるバレエの舞台では、どんなに困難なテクニックも自然にこなしているように見せなくてはなりません。もしも、その大変さが見えてしまったら、お客様は物語に集中できないでしょう。バレエがスポーツではなく、芸術である理由の一つがそこにあります。
英国ロイヤルバレエ団でプリンシパルを務めていた吉田都のフォトエッセイ。彼女のバレエ観、人生観が散りばめられている。日本で「正しいポジションとテクニック」を身体に叩きこむ教育を受けた彼女は、渡英して英国での教育文化の違いに驚かされたという。「英国ロイヤルバレエスクールでは、先生がリハーサル中にこんなことを言うのです。「ねえあなた、今、何を表現しようと思ってステップをした?」返す言葉を思いつきません。」そんな経験から、日本で研ぎ澄まされた「身体の感覚」と英国で学んだ「感情表現」があったからこそ彼女は今世界で踊ることができるのだ、と振り返る。同じロイアルバレエで活躍していた熊川哲也とはまた全然違った「強さ」が見えてくる綺麗な一冊。
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著者紹介:
高専在籍時にAFSの53期生としてアメリカのオレゴン州で一年間地元の高校に通う。帰国後アメリカのアーカンソー大学フェイエットビル校に編入し2011年に理学士コンピューターサイエンス、2012年に教養学士心理学を修了。2012年秋よりオックスフォード大学にて、博士号課程で計算神経科学を勉強中。色々と大変ですが、常に色んな事に挑戦しながら精一杯頑張ってます。
詳しくは自己紹介ページよりどうぞ^^




