【読書記録】バレエへの招待(鈴木晶)
『コッペリア』以降、パリ・オペラ座は優れたバレエを生み出すことはなかったと述べましたが、実際、二十世紀の初頭には、西ヨーロッパ全般にわたって、バレエは軽い芸能・娯楽になっていて、バレエを芸術だとみなす人は殆どいませんでした。そのままの状態が続いたなら、今日、バレエは消滅していたかもしれません。
ただし、ロシアのバレエだけは盛んで、高い水準を維持していました。そして一九〇九年、そのロシアのバレエ・ダンサーたちがパリにやってきて、一大バレエ・ブームを巻き起こしました。人々はロシアの高水準のバレエを見て、バレエが優れた芸術であることを再認識したのでした。
今日、世界中でバレエが隆盛を誇っているのは、もとをただせば、そのロシアのダンサーたちのおかげなのです。そのダンサーたちは二年後、「バレエ・リュス」というバレエ団を結成し、初公演を行います。この「バレエ・リュス」が、瀕死状態にあった西欧のバレエを救ったのです。
この書籍はバレエという芸術の起源と隆盛、文化的衰退と復興の歴史を紹介する。三浦雅士著の「バレエ入門」と似たコンセプトで書かれた本であるが、それと比べるとより客観的・一般的な視点からその文化が解説される。「イタリアでギリシア演劇を復興しようとしてオペラが生まれ、ギリシア舞踊の復興としてバレエが生まれました。」当時はそのバレエも「歌あり、器楽あり、詩の朗読ありといった、一種のヴァラエティ・ショー」の一部に過ぎなかった。それがどんな歴史を経て今のバレエの形に変化していったのか。その歴史的背景を小話を織り交ぜながら紹介し、バレエがより身近に感じる一冊。
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著者紹介:
高専在籍時にAFSの53期生としてアメリカのオレゴン州で一年間地元の高校に通う。帰国後アメリカのアーカンソー大学フェイエットビル校に編入し2011年に理学士コンピューターサイエンス、2012年に教養学士心理学を修了。2012年秋よりオックスフォード大学にて、博士号課程で計算神経科学を勉強中。色々と大変ですが、常に色んな事に挑戦しながら精一杯頑張ってます。
詳しくは自己紹介ページよりどうぞ^^