オックスフォードな日々

とあるオックスフォード大学院留学生のブログ

留学生の悩みのアメリカ・イギリス歯医者事情。NHSでルートカナル

昔から食後の歯磨きを欠かしたことはない。歯の表面を舌で触った時にツルツルしていないと、どうしても気になってしまってすぐに磨いてしまう。それなのに、よっぽど虫歯になりやすい体質なのか、今までの8年間の留学生活の間だけで二度も虫歯で痛い目を見た。そんな苦い経験から学ぶことも色々あったので今回はそんなことについて。

ルートカナル?

最初に痛い目をみたのはアメリカに留学2年目のこと。ポップコーンを食べていた時に、弾ける前の硬いコーンを「ガリッ」と思いっきり噛んでしまったことがあった。その後からどうもその歯が痛い。何を食べる時もその歯を使うと痛い。最初はコーンのせいだとばかり思っていたのだけれど、流石に数週間たっても症状が治まらないことからこれはおかしいぞ、と家の近くにある歯科医院まで行ってみることに。レントゲンの結果を見ながらお医者さんが一言。

ルートカナルが必要だね。

「ルート・・カナル・・?」

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心の声:(運河の・・道・・?何を言っているんだこのおっさんは)

「そう、神経を抜かなくちゃいけないね。手術になるから専門医を紹介するよ。この番号に連絡をいれて予約をして、神経を抜いたら被せ物を作るからまた来てくれ。」

ルートカナルとは日本語では「根管治療」。虫歯が進行しすぎて神経付近まで達してしまった場合、その神経を抜かないことにはもう痛みから逃れる術はないという。そもそも歯の神経を何故歯医者で抜けないのか謎だったけれどそれはさておき、もうすこし具体的な話を聞いてみるとこの根管治療だけで数百ドル、更にクラウン(被せ物)をすると千ドル近く(約10万円)もかかるとか。一応海外留学保険で歯科もカバーしていたけれど、異様に不安。それもそのはず、人生で一度も歯の神経を抜くだなんて考えたことさえなかったから。ネット等で調べて見ると「海外では小さい虫歯でもすぐに神経を抜くところがある」だとか「ルートカナルしても失敗してまた高いお金を払って再治療した」とか、そんな体験談ばかりが出てくる…。

 

そして、そうやって調べているうちに「3Mix-MP法」(URL)という「神経を抜かずに、抗菌剤を詰めることで病巣を無菌化することで組織修復を促す」という当時話題の治療法の存在を知った。神経はとってしまえばもう二度と戻ってこない。想像するだけで無性に不安になる…。幸い痛みもそこまでひどくなかったため、一回日本で信頼できるお医者さんに見てもらってからどうするかを決めよう、ということに。

そんなわけで、とりあえず一ヶ月後に日本に10日間だけ帰国の予定があったため、その日のうちに日本の歯科医院に連絡をとってみた。するとすぐに

「神経が残せる様でしたら残しますが、3MIX-MPを使ったとしてもあまり深い虫歯で残しても痛みが出る可能性がある場合は、神経を抜いた方が良い場合もあります。一度診療してからの判断になると思います。

期間ですが、神経を取ったりしなければ、2回位ですむ予定です。費用は当院では3MIX-MPを行った場合でも特別な料金は頂いておりません。

保険の自己負担分のみとなります。健常者で高齢でなければ3割負担だと思いますので、4番目と5番目の間ということで2本が虫歯になっているとしまして、
1. 神経を取らないですむ場合
– CR充填で3000円位。(1回の通院で済みます。
– インレーセットで5000円位(2回の通院です。)
2. 神経を取らなければならない場合
– 抜髄してクラウンセットで12000円位(最低4回の通院です。)
の自己負担になります。
CR充填・インレー・クラウン・抜髄・はネットで調べますと出てきますので、参考にしてください。」

との返事が。というわけで早速予約をいれて日本で治療をすることに。

日本での根幹治療

それから一ヶ月後、以前に連絡を入れた日本の歯科医院で再レントゲン。神経を抜かなくても良いことを期待したのだけれど…、残念ながらこちらでも診断は同様。ただ、根管治療をやるにしても丁度お盆の時期な上にたった10日間しかない帰国であったため時間的には相当キツイ。実は家のすぐ近くの歯科医院にも予め問い合わせて「そんな短期間では難しいです。」と断られていた。だけど「なんとかしましょう。」という院長先生、イケメンすぎる。娘が海外にいるらしくて留学生のこの状況を察してくれたのだろう。お盆休み以外の全ての日に予約を無理やりねじ込ませてくれた。

根管治療の手順としては以下。

image captured at リキタケ歯科医院

image captured at リキタケ歯科医院

  1. 神経を除去して管の壁を清掃し、消毒薬を入れ蓋をする。(2,3回の通院で繰り返し)
  2. 消毒の終わった管に充填剤を入れて蓋をして一週間程。
  3. クラウン(かぶせもの)の土台になるコアを入れて、クラウンを装着。

だから要するに、ルートカナルのための通院は最低4回といえども、最低所要日数で考えると10日はかかる、ということ。

ちなみに保険適応内のクラウンには「硬質レジンジャケット冠(プラスチック)」と「銀歯(金銀パラジウム合金かニッケルクロム合金)」があり、それらであればどちらも3000円程度で済むが経年劣化の問題があって一生ものではない。

一方で、保険適応外の選択肢であれば、「オールセラミック冠」や「ハイブリッドセラミック冠(セラミック+プラスチック)」、「メタルボンド(金属+セラミック)」などの選択肢もあって、これらは歯科医院によってもばらつきはあるけれどだいたい5万円~10万円位と高く、ただしほぼ一生もの。僕の場合は留学保険がこの治療にも適応できるということだったので、メタルボンドで作ってもらった。

 

オーラルケアもより入念に

以来、この反省を活かしてより歯の健康に気を配るようになった。

例えば歯ブラシ。手動歯ブラシと電動歯ブラシにはそれぞれ得意不得意があるとの事だったので、交互に使うことで抜かりなく歯垢を除去できるようにした。電動歯ブラシも、Panasonicの音波振動歯ブラシDoltzのちょっとだけいいのを使うようになった。

歯磨き粉も歯医者さんに聞いて、ハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite)という、「歯垢や口腔内細菌を吸着し」「歯面のミクロの傷を埋めて修復し」「初期むし歯を再石灰化」する作用を持つという成分を含む薬用ハミガキ粉を使うように。(薬用ハイドロキシアパタイト

日本だったらサンギの出している「薬用ハミガキ アパガードロイヤル」だけど、イギリスでは売っていないので代わりにBioRepairというものを使うようになった。

そして更には、歯磨きの後は必ずリステインでマウスウォッシュもするように。

それでもうこの先安泰…

と思ったのだけれど…

イギリスでも再びルートカナル問題

院進学の為に渡英して2年目の一昨年、どうもまた歯の様子がおかしかった。久しぶりに貰ったワサビ豆をガリガリ食べた次の日から…。その後からどうもその歯が痛い。何を食べる時もその歯を使うと痛い。(あれ、何か似たようなことが5年前くらいにもあった気が…)と。とりあえずその歯で食べることは極力避けつつ一時帰国時に前にお世話になった歯科医院に行ってみた。

「この歯ももう危ないですねー。だけど、今回はあと3日しか滞在しないんですよね。…仕方が有りません、応急処置だけしておきますが痛くなったらすぐに飛んで帰ってきてください。」

(…マジか…。音波振動歯ブラシとかハイドロキシアパタイトとかリステインとかってあれ、もももしかして情弱…?)

というわけでとりあえずギリギリまで削って詰め物してイギリスに戻ってきた。だけど、やっぱりその歯を使うと痛い。口左半分では殆ど何も食べられない…。今回の留学保険には歯科は含まれていなかったからイギリスで歯医者行くつもりなんて全く無かったんだけど、あまりにもひどいから調べてみるとNHS(国民保健サービス)が適応できる歯科医院が近くにあるのだとか。とりあえず検診に行ってみると、担当になったアラブ系歯科医はX-Rayの結果を見ながらそのルートカナルレベルの虫歯に加え何箇所か小さな虫歯もあるという

「ちゃんと歯磨きもできているのにこんなことになっているのには何か生活習慣に問題があるはずだ。心あたる節はないかい。例えば毎日朝から晩までコーラを飲んでいるとか、間食ばかりしているとか。

…あ…それだ…。学部時代から相当頻繁にエナジードリンクを一日中飲み続けていたし、こっちに来てからの研究生活はお昼ごはんを食べない代わりに一日中間食ばかりしていた。問題は常に口の中が糖分に晒されている状態で、エナジードリンクとかも一瞬で全部飲み干すのならいいけれど、時間をかけてチョビチョビ飲むのなんてもってのほかなのだとか。大反省…。

それはそうと歯の痛みが結構限界まで来てたから、とりあえずこの歯だけでもどうにかならないか見て欲しいとお願いすると「わかった」と言って何だか不器用そうな手つきでドリルを使って穴を開け始めるアラブ系歯科医。

(ん、なんかいつもより痛いぞ・・ん、あれ、痛いあ、やばい痛い

痛みのあまり思わず縮こまってストップをかける。

「ごめん、痛かったかい。いや、なんか君が日本で治療してきたこの歯、相当神経に近いところまで削ってあるみたいなんだ。なんでこんな治療がされているのかわからない。」と言いながら麻酔をかけはじめる。

日本で時間がなかったから応急処置だけしてもらったということを説明すると、

「わかった、じゃぁもう少し削ってから一回また埋めておこう。」と。

そして「そろそろ麻酔が回ったかな?」とか言いながら開けた穴を何かでツンツン

!!!!!!げ き つ う!!!!!!!

本当に目が飛び出るほどの痛み。今までの人生で一番の痛み。何も考えられなくなるような痛み。

「ぁksjdf;ヵjsどいfじゃl;sf!!!!!!!!!!!!」

とよくわからないことを言って慌てて彼を静止すると、彼は余裕で「あ、まだ麻酔が足りなかったかな。」と笑ってまた麻酔を追加する。

な・・・なんだこの人は・・・・。(恐怖)

結局この二度目の麻酔ですらあまり効かず、彼はこれ以上掘ることを断念してまた埋めただけ。

ちなみにその穴を埋める充填(filling)、NHSの保険が適応されるのは「アマルガム充填」と呼ばれる水銀が高濃度に含まれた合金のみであるという。これは健康への懸念から、日本ではもう何十年も前から使われることのなくなった充填だという。一方で、日本で一般的に使われる白いプラスチック製の「コンポジットレジン充填」が良ければ保険適応外なので110ポンド(約二万円)かかるとのこと。彼らはアマルガム充填の安全性を主張していたけれども、やっぱり不安だったので後者の「コンポジットレジン充填」をお願いした。なんてこった、要するに、穴を開けてびっくりして埋め直すためだけに2万円を捨ててしまったのだ…

ちなみに、ルートカナル治療もNHSの価格ではクラウンをいれないでよければ50ポンド前後、クラウンをいれたとしても200ポンド前後だというので、もともとは「最悪はここで治療してもらおう」と考えていた。だけど、この死ぬほど痛い思いをした経験から少しトラウマになってしまった。そして、日本では最低10日かかるこの治療が最短でだったの1回の通院で終わるとか不安すぎる。。というわけで、「ルートカナルは日本でやります。」と告げて、腫れを抑える抗生物質だけ出してもらって数週間後に歯科治療のためだけに2週間だけ結局帰国することになった。

イギリスの歯科治療の実情・留学生にできる対策

ちなみに、こんなトラウマレベルの経験をした僕が言うのも変だけれど、イギリスだから、NHSだからといって必ずしもサービスや技術の質が悪いというわけでは当然無い。例えば僕と同じ歯科医院でも、違うロシア人の担当医にあたった彼女はそれなりに満足している。僕自身も、流石に毎回歯に問題がある度に帰国することはできないから、またもし歯科の問題が発生したとしたら、その担当医に変えてもらおうと思ってる。

また例えば、応急処置だけイギリスで終わらせておいて、続きを日本に帰ってからやるという方法もある。便利なことに「患者からの申請があればレントゲン写真等を提供しなくてはいけない」という決まりがあるらしいので申請してコピーを出してもらうこともできる。僕の行ったところでは15~20ポンドの手数料で発行してくれた。

そして、イギリスに留学している人の中には「NHSがあるから」という理由でプライベートの保険に入っていなかったり、入っていたとしても僕のように歯科は含まれない場合も多いと思う。そんな人は、もしものためにこちらで歯科の保険に入っておくのが一番安心なのかな、と思う。

この表にあるように色々な選択肢はあるけれど、個人的には一番手っ取り早くわかりやすいのはBootsのプラン(URL)かなと思う。NHSの歯科医院にしか行く予定がないのであれば£10.58/月の”Boots NHS”でいいと思う。ちなみにロンドンにはプライベートで日本人の歯科医院もあるというので、そういうプライベートでの治療にも適応したいのであれば£15.46/月の”Boots Private Level 1″とかを選べばお得かな、と思う。

とりあえず、もう二度とこんな思いをしたくないため、最近ではエナジードリンクの代わりに水、間食も出来る限り控えるようにしている。。ちなみに例の信頼できるロシア人の歯科医師によれば、「デンタルフロスをしないことは歯を磨いてないことと同じ」とのことなので、こっちも毎日するように。。(単純)

二度あることは三度ある、というけれど、三度目の正直。より一層オーラルケアを大切にした生活習慣を身につけないとと、自分に言い聞かせている..。

追記

ツイッターで色々な反応を頂いているので幾つか載せておきます。

アメリカイギリステクノロジー医療ヨーロッパ留学ブログ(ブログ村)

著者紹介:

高専在籍時にAFSの53期生としてアメリカのオレゴン州で一年間地元の高校に通う。帰国後アメリカのアーカンソー大学フェイエットビル校に編入し2011年に理学士コンピューターサイエンス、2012年に教養学士心理学を修了。2012年秋よりオックスフォード大学にて、博士号課程で計算神経科学を勉強中。色々と大変ですが、常に色んな事に挑戦しながら精一杯頑張ってます。
詳しくは自己紹介ページよりどうぞ^^

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Aki • 2016年2月20日


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Comments

  1. @hogsford 2016年2月20日 - 7:55 PM URL

    ブログ更新しました。「歯医者だけは日本にいるうちに行っておけ」という言葉を身をもって学ぶ..;;
    『留学生の悩みのアメリカ・イギリス歯科事情。ルートカナルって最初何のことかと思った..』 https://t.co/0np4aYeraQ

  2. °Freeman Taketcharov ‏@yT_BME 2016年2月21日 - 9:51 AM URL

    oO(この人と割と似たような食生活してるので,自分の歯もヤバいことは自覚しておるよ)

  3. 宮脇真二郎 ‏@miyashinjp 2016年2月21日 - 9:52 AM URL

    へぇ、ルートカナルってそうやってやるんだ。僕は虫歯になりにくいけど、油断禁物。あ、最近フロスをサボり気味だ…(汗)。

  4. Shinsuke Suzuki ‏@szkshnsk 2016年2月21日 - 9:54 AM URL

    ぼくもルートカナル×2に$1500かかったなあ(保険ありで…)。ただ、アメリカの歯科保険は「歯並び矯正」も含めた予防に手厚いので、一概にダメだとは思わない。

  5. akano ‏@aatakano 2016年2月21日 - 9:55 AM URL

    んー・・・(保険があって、お金があるなら)アメリカの歯科のが良いと思うんですけどね。日本でやった根治治療、こちらで何本もやり直ししたし。アメリカは根治治療だけの専門医が居て、キッチリやってくれる。

  6. Satomi Oya ‏@silver_texas 2016年2月21日 - 9:56 AM URL

    母の実家が歯医者でよかったと思う。帰国時の行く場所リストでは美容院の次ぐらい。

  7. Monamiel ‏@monamiel 2016年2月21日 - 9:56 AM URL

    虫歯だらけの理由は常にチョコを食べているからだったのか。私boots private申し込もう…ロンドンで日本の歯科技術が受けられるならば!!

  8. 恩田知 ‏@ondatomo 2016年2月21日 - 9:57 AM URL

    何事も、経験ですな(笑)

  9. @wataponf1_uk 2016年2月21日 - 10:20 AM URL

    間食はたしかにダメですよね汗。僕も歯がめちゃくちゃ弱いけど、間食と歯磨きをコントロールするだけで5年間虫歯の進行をほぼ止められてる。

    留学生の悩みのアメリカ・イギリス歯医者事情。NHSでルートカナル https://t.co/P8WGhTrXeY via @hogsford

  10. @Himemicyan 2016年6月23日 - 10:54 PM URL

    留学生の悩みのアメリカ・イギリス歯医者事情。NHSでルートカナル https://t.co/iV6tsEYuOy @hogsfordさんから

  11. コメントを残す

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