recovery: ウッズホールとケベックとボーフム
気づけばオックスフォードに来てもう二年。そろそろゴールが見えてこないといけないんだけど、去年一年は研究とは関係ない部分で想定外の事が色々とあって結構不安定でほとんど進展がなく結果も出ず・・^^;;
「このままじゃいけない!」「心を入れ替えて頑張らなくては!」・・・というわけで今年の夏は、アメリカ→カナダ→ドイツ、と飛び回って心と体のリカバリに努めました。笑
まずは7月7日、七夕の日にロンドンを発って、マサチューセッツ州の港町ウッズホールにある海洋生物学研究所(MBL)まで。昨年沖縄科学技術大学院大学(OIST)のサマースクールでお世話になったイェール大学の研究者のラボのPIから、「MBLでの夏季プロジェクトの為にvisiting researcherとして来ないか」と素敵なお誘いを頂いたので、二つ返事で受けて実現することに。
た だ行くことを決めたのはいいものの、ウッズホールの周辺はオンボロモーテルでさえも一泊150ドルと滞在費がものすごく高く、3週間滞在することを考える と滞在費だけで3000ドルもかかってしまう。渡航費、滞在費は出してくれるというので気にする必要もないのだけど、自分が研究で役に立てる自信もあまり なかったので出来る限り最小限に抑えたかった。そうして調べていると、研究所のすぐ前の一等地に、シリコンバレーのIT起業家達が共同生活す る”Hacker House”のサイエンティスト版、”Climate House”というものがあることを発見。(“Climate House In Woods Hole Fosters Exchange Of Ideas“) サイエンスに携わる学生や研究者、教授達を一つ屋根の下に集めて交流させることで科学の発展に貢献できるコミュニティを作ることを目的に掲げる。滞在費も一泊55ドルというお手頃な値段だったので、すぐにここに3週間滞在することを決定。
ホ テルではないからプライベートルームはなく、寝室のベッドを一つ与えられるだけでシャワーもキッチンも共有だけど、MBLに夏季研修に来ているパデュー大 の学部生とかMITの院生、カルテックのポスドクに教授・・等々、バックグラウンドはみんな全然違うけど目を輝かせて研究に取り組む素敵な人ばかりで、そ んな彼らと3週間を共に過ごせてとても満足だった。ディナーを一緒にしたり、週末にはMartha’s vineyardという離れ島までフェリーで行って一周100キロのコースをサイクリングしたり、本当に素敵な時間を過ごすことができた^^
肝 心の研究も、朝9時から夕方の7時までと、オックスフォードにいる時と同じ位のペースで楽すぎず忙しすぎず。自分にとっては全く新しい分野で学ばなくては いけないことが多かったけど、生理学者と肩を並べてプロジェクトに取り組むのはとても楽しかったし、MBLではこの時期毎晩色々な研究者による講演があっ て、それもなかなか嬉しかった^^
そんな充実した3週間もあっという間に過ぎ去り、次は計算神経科学の学会に出席するためにカナ ダのケベック・シティまで。この分野を始めてからは初めての大きな学会だったから、近い分野で他の人達がどんなことをしているのかを知ることができて良 かった。同世代の研究者が何歩も先を走っているのを見聞きして少し焦燥感に駆られつつも、しっかり頑張らなくちゃ、といい刺激をもらえた。そして何より も、OISTのサマースクールの時に一緒だった他の研究者とも一年ぶりに再会して近況報告しあったり、ケベック・シティの綺麗な町並みを散策したりできて 楽しかった♪
そ の後は二週間帰国、そしてオックスフォードに一週間戻って新しいアパートへの引っ越し。そして8月最後の一週間は、ドイツのBochumの大学 で、”Neuronal dynamics approaches to cognitive robotics”という、神経科学とロボティックスの融合分野に焦点を当てたサマースクールに参加してきた。参加学生数は20人程。フランス、ドイツ、 チリ、ベトナム、シンガポール、ポルトガル、メキシコ、スペイン、カナダ、アメリカ、イラン、ブルガリア、イタリア、ロシア・・と、これもOISTのサ マースクールの時みたいに学生は世界中から集まっていた。朝から晩までレクチャーとプロジェクトに追われて結構intensiveだったけど、毎晩みんな で違うレストランを巡って、8時頃から深夜まで長々と食べて喋って飲んで充実した一週間だった(笑)
なんかやけにみんなAkiAkiと寄って来るから不思議に思ってたんだけど、どうやらロボティックスをやっている人にとって日本はフロンティアという認識があって、心の何処かで皆日本に憧れを抱いてる模様(笑)
で も同時に、せっかくここまでみんなが日本に興味を持ってくれているのに、こういう場に日本からの学生がいないのは少し寂しくも感じてしまった。OISTの サマースクールの時も日本の大学からの参加者は一人もいなかったことを思い出して、こういう世界の学生が集まる場に飛び込む日本人って一体どれくらいいる んだろうなぁ・・と。世界中の人たちが”Amari’s equation”とか日本人の名前を出して議論しているのに、そこに日本人がいないのってやっぱり虚しい。
前にUCLでPIをやっている大沼教授にインタビューをした時に彼の語っていたことが面白かったのでちょっと引用。
「日本人も国際社会の一員な訳だから、国際社会の一員としての義務を果たすべき。日本も国際社会の他の皆と一緒になって、一員として国際社会全体を繁栄する方 向にもっていかなくてはいけない。そういう国際社会のリーダーに成りうるような日本人をもっと増やさなければいけないと思っているんだよね。
国 際社会で、各国の人たちと英語で対等に話しやっていける人をどのくらい日本の政府は作ればいいかという話は、日本国内でもいろいろな話があって、ある意見 で言うと、もし日本人の一割が英語で普通に会話ができるようになって、4%ぐらいの人が国際社会で活躍するようになれば、500万人位の日本人が海外に出 て国際社会で貢献できるくらいの社会になるという。そして、そうすればイギリスやアメリカなどと同様なバランスになると言われている。今の日本はそういう 状況には全くなっていない。
少なくとも我々アカデミックで研究する上でおいて、例えばハーバード、ケンブリッジなどの全てのデパートメン トに中国人やインド人の教授がいる。彼らは人口が多いということもあるけど、今はかなりのところに韓国人の教授もいる。一方で、日本人の教授はほとんどい ない。また例えばビジネスの世界においても、日本の、特に国際化が必要な大手企業のほとんどには外人の取締役がはいっている。でも、欧米の大手企業で取締 役をやっている日本人の話はあまり聞かない。何故こういうことが起こるのかというと、そこには理由がある。
国際社会の仕組みの根本を考え てみると、例えばケンブリッジ、オックスフォード、ハーバードなどのクラスメート達がそこでネットワークを作っていて、色々な所で会社等の良いポジション を皆でシェアしあっているという現実が少なからずある。問題はそこの段階に日本人がなかなかはいっていけないこと。そんな現状があるからこそ、学部くらい の若い段階で世界の将来リーダーになるような人たちが集まるようなところにまずは日本人を送り込むということが重要なんじゃないかと思う。
日本人は他の国でもやっていけるくらい充分に優秀であることは明らかなので、それを活かしていないのはもったいないと思うね。」
(UCL大沼教授インタビュー前半「海外に出て研究することの意味」 )
国際化とかグローバル・リーダーとかいう言葉がもてはやされて、TOEICの点数だとか、海外に出ていく日本人の数だとか、海外から来る留学生の数だとかば かりが話題になるけど、核心はたぶんそこにはない気がする。英語が得意でも喋らなければ価値がないし、研究室をまるまる海外に持ちだしたってそこで日本語 ばかり話していたら日本にいるのと変わらない。国際学会に行っても気まずいからって日本人だけで食事してたら誰も寄ってこないし、日本に来る留学生の数を いくら増やしたって、日本に多かれ少なかれ興味を抱いている彼らとの交流だけでは、そうでない大多数の海外の人との接し方は学べない。きっと核心部分っ て、世界中の人たちが集まる中に自ら物怖じせずに入って行くことができて、ディナーテーブルを囲んでいる時に適度に注目を集められて、くだらない話題のあ とに真面目な話題を熱く議論できるような能力な気がする。だからどこに住んでいるかとかどこで勉強しているかとかは関係なく、いかにしてそういう人材を育 てていくかなんだろうな、と思ったり。
こんなこと書くのも、自分自身がそういう能力に欠けていると感じるからこそ。苦手だからこそ、そういう場に無理矢理でも自分を置いて少しずつでも変えていきたいと思ってる。
博士課程も後半戦スタート。この夏心の底からリフレッシュできたから、今年は頑張って成果出す!笑
がんばりまーす。
著者紹介:
高専在籍時にAFSの53期生としてアメリカのオレゴン州で一年間地元の高校に通う。帰国後アメリカのアーカンソー大学フェイエットビル校に編入し2011年に理学士コンピューターサイエンス、2012年に教養学士心理学を修了。2012年秋よりオックスフォード大学にて、博士号課程で計算神経科学を勉強中。色々と大変ですが、常に色んな事に挑戦しながら精一杯頑張ってます。
詳しくは自己紹介ページよりどうぞ^^





Rin 2014年9月1日 - 2:38 AM URL
以前一度コメントさせて頂いたRinと申します。
最後のグローバル化についての文章、考えさせられました。私は留学を終えて帰国しましたが、やはり日本という国についていろいろ考えます。博士課程大変だと思いますが、頑張ってくださいね^^!
Aki 2014年9月1日 - 2:39 AM URL
>Rinさん
お久しぶりです。もう帰国されてたんですね^^
マンチェスター行ってみたかったです。笑
はい、世界で活躍したい人にとって本当に必要な能力は、日本にいたってやり方次第でいくらでも伸ばせると感じています。
お互い頑張りましょう^^