オックスフォードな日々

とあるオックスフォード大学院留学生のブログ

成績の価値

今日から大学は一週間の春休みに入る。学期の中間地点と言うこともあり、秋学期の感謝祭と春学期の春休みの前はどのクラスも課題や試験が目白押しになる。そんな中、改めて成績の価値というものについて考える機会を得た。

grades

「Aをとるためには。」という話が良く出る。それは、GPAという成績の平均を数値化したものが進学においても就職においても大きな判断基準になる例が多いからである。アメリカでは、近年よくささやかれるGrade inflationの影響か、大学のレベルに応じてAの難易度も大きく差があるそうだ。それ故か、レベルを下げた大学に行って高いGPAをとる方が、レベルの高い大学に行ってGPAを落とすよりは有利であるという意見も多く耳にする。また、同じ大学内のクラスであったとしても、教授によってはAを一人しか出さないようなクラスもあれば、半数がAをとるクラスも存在する。

そうなってくると、GPAの意義に疑問を抱かないではいられなくなる。端的に言うなれば、より少ない努力で同じ成績を取ることが可能であり、最悪の場合、努力を怠った学生の方が優遇される可能性を否めないからである。

今学期履修中のあるクラスで新任の教授に「Aはクラスで一人に出すか出さないかだ。」と宣言され、クラスは大騒ぎになった。その教授はこう続けた。「現実世界はそうは甘くない。100%やることは当然であり、その遙か上の結果を残す者でさえ成功できるとは限らない。君たちにある選択肢は、それでも本気でやるか、諦めるかだ。」確かに筋は通っていると思ったが、自分はそれを聞いて怯み運の悪さを呪い、他の学生と同様、その教授に対して良い感情を持たなかった。

しかし、ある統計を知ったとき、そんな感情を持った自分を恥じた。その統計によると、レベルが高い大学であるほど、学生のGPAの平均が高い傾向があるという。それが意味するところは、できる人はそんな条件下でもやはりできるということだ。他人と自分の条件を比較し愚痴をこぼしたり、更には教授を学問とは遠く離れた面で評価したところで何にもならない。せいぜい自分は、鎖でつながれただけの範囲を縄張りと勘違いし、他人に侵される度に怯え、やたらと吠えているだけの犬と何ら変わりはなかった。

ある時から自分の中で、目的と結果とが入れ違ってしまっていたようである。本来大学とは学舎である。限られた時間の中で、いかに多くのことを学ぶかが目的である。自分が吸収し、成長しなくてはいけない。GPAなどという数値は自分の何も語らない。GPAで過度に一喜一憂しているうちは、おそらく自分はまだ未熟なのだろう。本気で何かをやって失敗することもあるだろうが、大切なのはそこから立ち直れるかどうかなのだろう。そして、いつでも最大の努力を惜しまない事なのだろう。最後に成功をつかめるかどうかはおおよそ単なる意地比べなのだろうと思う。

追記

この記事を書いてからもう5年以上の月日がたつ。アメリカでの4年間の学部生活を終え、今ではオックスフォード大学での博士課程も最終年に差し掛かる。この記事を書いた当時、「GPAなんかにとらわれるのはもうやめてしまえ!」なんて思ったものだけれど、実は結局最後までこの観念から逃れることはできなかった。しかしその結果、卒業までに取得した単位の中で一つをのぞけば全てAを獲得し、学年主席として卒業することになった。「紙風船の呪縛とアメリカ学部時代の僕」と題したこの3年後に書いた記事がその後日談をまとめている。

今振り返ってみて思うことは、やはりGPAは大切である、ということ。少なくとも、客観的指標としては一番わかりやすいことは確かであることは誰にも否定できない。進学にしても就活にしてもまず見られるのはGPA。今学生をしている皆さんは、苦しいだろうけれどもこの現実から目をそらさないで頑張ってほしい。今は辛くても、後できっと後悔はしないはず。

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著者紹介:

高専在籍時にAFSの53期生としてアメリカのオレゴン州で一年間地元の高校に通う。帰国後アメリカのアーカンソー大学フェイエットビル校に編入し2011年に理学士コンピューターサイエンス、2012年に教養学士心理学を修了。2012年秋よりオックスフォード大学にて、博士号課程で計算神経科学を勉強中。色々と大変ですが、常に色んな事に挑戦しながら精一杯頑張ってます。
詳しくは自己紹介ページよりどうぞ^^

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Aki • 2010年3月20日


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Comments

  1. S.T. 2010年3月21日 - 1:45 PM URL

    GPAがキャリアについて回るアメリカは切実な問題ですよね。大学の要素として、もう一つコネクションもあると思う。中堅どころの大学に大したコネがあるとは思えないけど、一流大学は教授&同級生のコネは世渡り術として重要なのでしょう。アメリカと日本が同じかは知らないけど。

  2. Aki 2010年3月22日 - 11:36 AM URL

    おそらくどこでも同じでしょうね。出会いの場を大切にしてできる限り交流の輪は広げていかなくてはいけないですよね。僕はつい人との時間を軽視してしまう傾向があるので気をつけなくてはいけない点ですね。汗

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