オックスフォードな日々

とあるオックスフォード大学院留学生のブログ

アメリカ学部留学3 オナーズプログラムのススメ

オナーズプログラムとは?

以前の記事で「チャレンジしたい人にはチャレンジをさせる仕組み」と少しだけ触れたアメリカの大学のオナーズプログラムについて、今日はもう少し詳しく書いてみたいと思います。

一口にオナーズプログラムと言っても大学によってその定義や意味は大きく変わってくるのですが、基本的なその目的は、主に比較的入試の容易な地方の州立大学等において、優秀な学生や意欲の高い学生を正当に評価するためであると認識しています。

アメリカ学部留学2 大学選び – 学費と大学ランキング」でも書いたように、アメリカ国内で上位100番前後に評価されている地方の大学には所謂名門大学と呼ばれるトップの大学の学生とも肩を並べるような学生は多くいます。例えば大学時代の友達のアメリカ人を例に挙げれば、彼はハーバードに合格をしていながらも、学費・生活費全額支給の奨学金を得られるという理由から地元の州立大学に進学しました。こういう実力のある学生の受け皿となるのがオナーズプログラムというわけなのです。オナーズプログラムは一般学生の為のカリキュラムに様々な課題を上乗せすることで、どんなレベルの学生にとっても大学生活が無駄になることの無い環境を与えます。そして、卒業時にはその成果に応じたLatin honorという称号が授与され、これは大学院進学や就職においても大きな意味を成すようになります。国内100番前後の大学出身者が「○○州立大学を卒業しました」と言うだけであれば「中堅大学でてるから、面接に呼んでみようか。」という程度の評価が、「○○州立大学をSumma cum laudeで卒業しました。」と言うことで「是非面接に来てください。」となるほどの違いを持つと感じています。そしてそういう仕組があるからこそ、優秀な学生も安心して地元の州立大学に進学するという事例も多くあるのでしょう。

さて、そのオナーズプログラムが具体的にはどういったものなのか。先程も述べた通りプログラムの基準や内容は大学によって大きく変わってきますが、この記事では僕の出身大学であるアーカンソー大学のオナーズプログラムを一例として詳しく紹介したいと思います。

受け入れ基準

まず、オナーズプログラムに受け入れられるためには、一定の条件があります。アーカンソー大学のオナーズプログラムの場合:

– 大学受験共通試験のACTで28/36以上、或いはSATで1240/1600以上
– ビジネス学部においては高校時代のGPAが3.75/4以上、他の学部においてはGPAが3.5以上。(APコースの成績は割増評価される)

と言う感じで、高校時代にある程度勉強が出来た学生であれば誰でも参加することが可能です。毎年この中で特に優秀な新入生100名程度に$50,000ドル(≒450万円)のフェローシップが支給されています。ただし、アーカンソー大学は留学生に対してSATの提出を求めないため、SATを受けていなかった僕のような留学生は前者の条件を満たすことが出来ず入学時にオナーズプログラムに参加できませんでした。しかしそういう場合でも、一学期目が終わった段階で、学部課程におけるGPAが一定の基準(3.5~3.8と専攻によって様々)を満たしていることを条件に参加が認められます。この場合はフェローシップは貰えないのですが、それ以外にも年間で計$500,000 (≒4500万円)から$1 million (≒9000万円)にも及ぶ研究奨励金や留学奨学金がオナーズカリッジの学生に支給されるためその対象にはなります。更に、オナーズプログラムに属することで、人気のコースを優先的に選択する権利も与えられ、相当自由に受講コースの計画をたてることが可能になります。

オナーズプログラムの内容

このこの受講コースに関して、オナーズプログラムの学生は一般の学生とは卒業に必要になってくる必須コースも変わってきます。大学で開講される多くのコースは、一般コースとオナーズコースとで別々に開講され、教授や教室が異なるのは当然ながら、基本的にディスカッションを多く取り入れた少人数制授業で、内容もより密なものとなり、試験の採点基準や課題の量も大きく変わってきます。例えば、オナーズコースではそれぞれにおいて研究論文提出が課せられていましたし、またいくつかのオナーズコースにおいてはAの成績を取るための基準が95%以上と高めに設定されていたりしました。(一般コースでは基本的に90%以上でA)更にアーカンソー大学では、Honors Colloquiumと呼ばれる、オナーズカリッジによって開講される特別なコースをHumanity (人文科学)、Social Science (社会科学)、Natural Science (自然科学)からそれぞれ1つずつ受講することも条件でした。

ただしこれらのオナーズコースを、必ずしも全ての科目において受講しなくてはいけないわけではありません。アーカンソー大学では実験や研究コースを除いて、基本的に一週間の授業時間1時間に対して1単位が割り振られるのですが、卒業に必要な124単位の内三分の一以上の単位をオナーズコースから受講することが条件となっていました

例として僕の受講したオナーズコース名を列挙すると、

  • Birth of Modern Culture / 近代文化の誕生 (3単位)
  • World Civilization II / 世界の文明化 II (3単位)
  • Art History / 芸術史 (3単位)
  • World Literature I / 世界文学 I (3単位)
  • World Literature II / 世界文学 II (3単位)
  • History, culture, religion, and arts of East Asia / 東アジアの歴史、文化、宗教と芸術 (3単位)
  • Calculus III / 微積分学 III (4単位)
  • Biological anthropology / 生物人類学 (3単位)
  • Language development / 言語発達 (3単位)
  • Modeling Healthcare Logistics In Virtual Worlds / 仮想世界上での医療システムのモデル化 (3単位)
  • Psychologiy experiments / 心理学実験 (3単位)
  • Honors research / オナーズ研究 (2単位)
  • Primate Behavioral Ecology / 霊長類行動生態学 (3単位)
  • Game design theory / ゲームデザイン理論 (3単位)

といった感じでした。僕はコンピュータサイエンスと心理学を専攻していたのですが、こうして改めてみてみると、全く関係しないコースも多く受講していたことに気づきます。これはアメリカのリベラル・アーツ教育の特色を色濃く反映している分かりやすい例でしょう。

Latin Honorの決定

ところでオナーズプログラムの学生は、GPAが3.5を切った段階でオナーズプログラムからは脱離を余儀なくされるため、1年生の段階では数の多かったオナーズ学生数も、卒業間近になると大分少なくなります。オナーズ必須単位を習得し終えると、卒業時に与えられる称号(Latin honor)が、GPA卒論発表時のコミッティーから得た評価を元に決定されます。アーカンソー大学の場合は:

  • GPA 3.9/4以上、卒論発表6.5/9以上: summa cum laude (with highest honor)
  • GPA 3.8/4以上、卒論発表3.5/9以上: magna cum laude (with great honor)
  • GPA 3.5/4以上、卒論発表1.0/9以上: cum laude (with honor)

という具合です。ちなみにコミッティーに関しては、同じ学部から2人の教授、他学部から1人の教授に自身で依頼し、そして更に1人の教授がランダムで割り振られます。

最終的にどれくらいの人が人がそれぞれの称号を得て卒業するのかということを示すために、僕の属していたコンピュータサイエンス・コンピュータエンジニアリング学部と心理学部の2011年、2012年の数を例にあげると、

Department of Computer Science and Computer Engineering 2011
卒業生35名中
– summa cum laude 2名
– magna cum laude 3名
– cum laude 0名

Department of Psychology 2012
卒業生69名中
– summa cum laude: 3名
– magna cum laude: 3名
– cum laude: 1名

でした。

最後に

というわけで、アメリカの中堅州立大学に進学した留学生は、是非オナーズプログラムに参加してみましょう。大学によっては内容も全然違うかもしれませんが、とてもいい経験になるのでは、と思います。是非参考にしてみてください^^/

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著者紹介:

高専在籍時にAFSの53期生としてアメリカのオレゴン州で一年間地元の高校に通う。帰国後アメリカのアーカンソー大学フェイエットビル校に編入し2011年に理学士コンピューターサイエンス、2012年に教養学士心理学を修了。2012年秋よりオックスフォード大学にて、博士号課程で計算神経科学を勉強中。色々と大変ですが、常に色んな事に挑戦しながら精一杯頑張ってます。
詳しくは自己紹介ページよりどうぞ^^

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Aki • 2013年5月4日


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Comments

  1. ブルン 2013年5月4日 - 3:07 PM URL

    1. 無題
    AKiさんのオナーズプログラムに数学関係がほとんどないのは、既に履修済みだからなのですね。ダブルディグリーって数学の得意な人が数学関連分野プラス何かという組み合わせで取ることが多かったりしますか?
    http://ameblo.jp/brunn/

  2. Aki 2013年5月4日 - 7:41 PM URL

    2. Re:無題
    >ブルンさん
    コメントありがとうございます。修得したオナーズ単位に数学が殆ど無いのにはそういう理由もありますが、それ以上にコースオファーのタイミングとスケジュールの関係の方がより大きな理由でした。普通のコースに比べてオナーズコースはオファーされる頻度が低く、またオファーされていたとしてもダブルディグリーを選んでいるとなかなか時間が合わなかったりとで^^;

    アメリカではダブルディグリーとダブルメジャーは区別されていて、同じ種類のディグリー(B.S. / B.A.)に分類される2つの専攻をすることをダブルメジャー、異なる種類のディグリーに分類される2つの専攻をすることをダブルディグリーとされます。

    そういうことから、数学と物理、数学とコンピュータ・サイエンスというような組み合わせはとても多くありますが、その場合はどちらもB.S.なのでダブルメジャーということになります。

    一方で、数学と歴史、数学とビジネス、などといった場合はディグリーが異なるためダブルディグリーとなり、こちらは修得単位数も相当膨らむためか前者と比べるとだいぶ少ないようです。

  3. mari. 2013年5月4日 - 8:39 PM URL

    3. 無題
    アメリカの大学はどの大学へ行っても、勉強したい人は満足できるまでやれるようなシステムになっているのですねー(*^^*)
    オナーズコースの授業どれも面白そうです。英国の大学は割と専門に特化している気がするので、そこが米国とは違いますね:)modelling health care logistics in virtual worldsってどんなこと学ばれたんですか?:)
    米国へ行ったことがないので、Akiさんのアメリカでのお話、興味深く拝見させて頂いてます☆

    http://ameblo.jp/des2fraises12mari/

  4. Aki 2013年5月4日 - 10:04 PM URL

    4. Re:無題
    >mari.さん
    コメントありがとうございます。アメリカの大学のこんな仕組みがとても好きでした^^ ただ一方で、専門知識だけを見るとイギリスやカナダ、日本の大学を出た大学生と比べると劣りがちな一面もあるのですけどね^^;

    Modelling health care logistics in virtual worldsはコンピュータ・サイエンスのコースだったんですが、その焦点は、「3D仮想世界がどのようにして医療の分野で役に立ちうるか、そしてユビキタスコンピューティングなどのIT技術が医療の未来をどう変えうるか」ということでした。
    このコースでは、高価な医療機械の3Dモデルを作ってみて、誰もが無料でそれを使ってトレーニングできるようなゴールを想定した簡単なシミュレーションをしてみたり、スマホみたいなデバイスで室内の医療機械を見つけてそれらを操作できるシステムを作ったり、など、なかなかおもしろいコースでした 🙂
    mari.さんのイギリス大学生活のブログもいつも楽しく読んでいますよ!あと一年の大学生活、たくさんいい思い出できるといいですね^^

  5. ブルン 2013年5月4日 - 10:09 PM URL

    5. ありがとうございます
    >Akiさん
    とても詳しい説明ありがとうございます。
    ダブルメジャーとダブルディグリーの違いが
    よくわかりました。
    http://ameblo.jp/brunn/

  6. MM 2013年5月11日 - 9:32 AM URL

    6. こんにちは^^
    いつも楽しくブログを読ませていただいています。

    我が家の子どもは、米国にある大学のHonors Programを経て、現在は東部の研究大学PhD Program(理系)で研究生活を送っています。

    ご指摘のとおり、米国・学部に留学する場合、Honors Programは学力の高い日本人学生にはお勧めですね。

    さて、Akiさんは、現在オックスフォード大学の博士課程におられるようですが、学部卒業後、MSプログラムへ応募する場合について、何かアドバイスいただけますか?
    よろしくお願いします。

  7. Aki 2013年5月11日 - 7:43 PM URL

    7. Re:こんにちは^^
    >MMさん
    はじめまして。コメントありがとうございます。
    Honors Programは学生にとっても、学校にとっても有益な良いプログラムですよね。こんな風に「何頑張っちゃってるの?」というような雰囲気を作らない環境はとても大切だと思います。

    ご質問に関しまして、オックスフォード大学のMS課程に応募される場合の話でしょうか。
    オックスフォード大学の場合、修士課程はMScというレクチャーベースの1年コースと、MPhilという研究ベースの2年コースがあります。
    MScの場合は、他の学校と同様、学部時代のGPAやStatement of Purpose、推薦状が重視されるようです。
    一方でMPhilやDPhil(Ph.D)の場合は、既に研究したい内容がはっきりとしている必要があり、志願時に研究提案書の提出と、インタビューにおける口頭発表が求められます。従ってこちらの場合は、予め興味のある教官と連絡を取り合い、研究の方向性を具体的にしてから応募することが望ましいと思います。

    また、これは大学院探しをしている際に、学部時代の指導教官からアドバイスされたことなのですが、特別な理由がない限りはマスターではなくPh.Dに応募することの方が望ましいとのことでした。例えば、将来的に研究を続けるつもりはないが修士学位は取りたいという場合、まずは中堅大学で修士を得て博士号でトップ校を目指す場合、志望する大学院が修士からの入学を求める場合等においてです。またアメリカにおいて奨学金の取りやすさを考えた場合にも、期間が長く一定の成果をあげることの期待されるPh.D課程の方が非常にチャンスも高いことにもその理由はあります。

    見当違いの回答でしたら申し訳ありません。具体的な質問をいただければ僕の分かる範囲でお答えしたり記事を書いたりします^^

  8. MM 2013年5月12日 - 7:31 PM URL

    8. Re:Re:こんにちは^^
    >Akiさん

    どうもありがとうございます。

    修士を取ったくらいではあまりメリットはなさそうですね。

    またいろいろ教えてください。

  9. Aki 2013年5月14日 - 8:09 AM URL

    9. Re:Re:Re:こんにちは^^
    >MMさん
    一概にそうとも言い切れないですが、少なくとも僕の周りではそのような意見が大半でした。
    はい、もし僕でお力になれるようなことがありましたらいつでもお気軽におたずねください。

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